第10回 JTAGハイブリッド検査の最新動向

ようやく、コロナの感染者数が減ってきましたね。
今月は久しぶりにリアルの展示会に出展することができます。今回は、図研さんと一緒にET & IoT 2021(11/17~11/19 パシフィコ横浜、小間番号:CM15|University Pavilion)に参加します。
CR-8000とJTAG ProVisionを連携した「BGA基板の実装基板テストに有効なJTAGバウンダリスキャンのテスト容易化設計ソリューション」にご興味がある方は、ぜひ足をお運びただけると嬉しいです。

ET & IoT 2021サイト:
https://f2ff.jp/etexpo/2021/exhibitors/detail.php?id=1001&lang=ja

 
さて、「ハイブリッド検査」という言葉をご存知でしょうか?
前回は、さまざまな検査機の特徴と弱点をご紹介しましたが、今回は、JTAGテストと他の検査手法を組み合わせた「JTAGハイブリッド検査」について、これまで雑誌やセミナー、エレクトロニクス実装学会の公開研究会などで発表してきた事例をご紹介します。

 

製品に求める品質からハイブリッド検査を考える

検査手法によって、メリットがある反面、さまざまな課題があります。1枚のBGA実装基板を確実に実装保証するためには、すべての検査手法を取り入れなければなりませんが、それでは多くのコストがかかってしまい現実的ではありません。しかし、1つの検査手法だけではBGA基板の実装保証ができない状況になっています。

そこで、各検査手法の弱点を補完するために、JTAGテストと従来の検査手法を組み合わせたハイブリッド検査が使われるケースが増えています。テスト戦略を検討するときには、皆さまが所有している検査機がどのような実装保証の役割を担い、メリットがあるか、また、その検査機では実装保証できないものは何であり、どのような課題があるかを理解することが重要です。図1に一般的な検査手法の役割と課題をまとめましたので、検討する際の参考にしていただけると嬉しいです。

 

各種検査装置、実装保証の役割と課題

図1.各種検査装置、実装保証の役割と課題

 
■AOIの特徴と、JTAGテストとのハイブリッド検査
例えば、画像テストのAOI(自動外観検査)をお使いの場合は、AOIにはQFPやチップ部品の有無、はんだフィレットを確認する役割がある一方、BGA部品のテストができないこと、テストの準備(レシピ作り)に時間がかかるといった課題があることがわかります。

では、AOIにJTAGテストを追加するとどうなるでしょうか。まず、BGA、QFPなどの狭ピッチ部品のテストができるようになり、実装保証できる範囲(テストカバレッジ)が向上します。BGAなどのデジタル回路はJTAGテストがカバーして、アナログ回路のQFPとチップ部品はAOIがカバーすることができます。画像検査と電気検査の組み合わせになるため、装置を結合することはありませんが相性が良い組み合わせになります。

 
■インサーキットテスト ICTの特徴と、JTAGテストのハイブリッド検査
次にインサーキットテストとJTAGテストのハイブリッド検査を行う場合ですが、テストパッドを配置できる実装密度が低いアナログ回路の検査はインサーキットテストで行い、高速デジタル回路とBGA周辺はJTAGテストで検査できるため、BGA基板の全体を確実に実装保証することができます。インサーキットテストとJTAGテストの課題を補完し合う関係にあり、どちらも電気検査のため相性が良い組み合わせになります。さらに、テストプログラムを書き込む必要がないため、どちらも検査を短時間で実行でき、量産試験に有効なハイブリッド検査となります。また、故障箇所をピンポイントで特定することができるメリットがあります。

インサーキットテストは、可動ピンで検査するフライングプローブ式とピン治具式のインサーキットテストがあり、どちらの検査装置にもJTAGテストを組み込むことができます。図2は、フライングプローブ式のICTとJTAGテストを組み合わせたハイブリッド検査装置の例です。ICT本体にJTAGコントローラを内蔵して、インサーキットテスト用のアプリケーションからJTAGテストを実行して合否判定と故障解析を行うことができます。

 

フライングプローブテスタ ICT とJTAGテストのハイブリッド検査装置

図2.フライングプローブテスタ ICT とJTAGテストのハイブリッド検査装置

 
■ファンクションテスト FCTとJTAGテストのハイブリッド検査
ファンクションテストとJTAGテストのハイブリッド検査は、どちらも被検査基板を通電して行う電気検査のため、親和性が高いです。図3のように、既存のファンクションテストに、JTAGコントローラを組み込むだけで、簡単にハイブリッド検査装置を構築することができます。

JTAGテストでカバーしているデジタル回路は、ファンクションテストから省くことができるため、ファンクションテストのプログラム開発規模を大幅に削減でき、エンジニアの負担を低減することができます。貴重なエンジニアのリソースを、新製品の開発に集中することができるようになります。

 

JTAGテストとファンクションテストのハイブリッド検査装置

図3.JTAGテストとファンクションテストのハイブリッド検査装置

 
■3次元X線テストとJTAGテストのハイブリッド検査
X線CTテストとJTAGテストのハイブリッド検査では、BGAを中心としたデジタル回路を集中的にテストと解析ができる組み合わせになります。JTAGテストを使って短時間でBGAの電気試験を行い、X線CTによりBGAのはんだ状態を観察することができます。画像検査と電気検査のため、装置を1つにすることはできませんが、2つの検査工程の検査結果を有効活用することが重要になります。

BGA基板に不良があったとき、一般的に故障解析を行う際には、断面解析を行いますが、故障箇所を特定できない状態で、手当たり次第に基板を切断してしまうと、貴重な不良サンプルを失ってしまいます。しかし、3次元X線検査とJTAGテストのハイブリッド検査では、BGA実装基板の故障解析を非破壊で行うことができます。

 

JTAGテストとX線CTテストの組み合わせ

図4.JTAGテストとX線CTテストの組み合わせ

 
以上、さまざまなテストとJTAGテストとのハイブリッド検査について、そのメリットを中心にご説明しました。皆さまの新製品の設計段階では、このように検査機のメリット、デメリットを考慮し、どのような方法で実装基板の検査を行うべきかを一度考えていただきたいです。その際に、選択した手法でスムースに検査ができるよう、回路設計のデザインレビュー時にテスト容易化設計を考慮することが重要になります。特にJTAGテストを活用したハイブリッド検査は、検査コストと品質保証のバランスが良く、回路設計時にテスト容易化設計を行うことにより、最大限の効果を得られます。

 

「真の原因」へのアプローチについて講演します

これまでご紹介してきたさまざまな検査機を活用して、高密度BGA実装基板の故障解析を行った事例をエレクトロニクス実装学会 検査技術委員会の公開研究会(2021年12月3日 オンライン開催)で発表します。BGA実装基板に不良が発生した時に、どのようなアプローチで「真の原因」に到達したか、実例を交えてご紹介します。また、これまでの連載でもご紹介してきましたテスト戦略、テスト容易化設計の重要性について講演します。ご関心がある方は、ぜひご参加ください。

詳細はこちら
https://web.jiep.or.jp/seminar2/tcwg/tc18_bot20211203/

 

BGA実装基板の故障解析事例と高密度実装基板のテスト戦略

図5.BGA実装基板の故障解析事例と高密度実装基板のテスト戦略

 

次回予告「PythonとJTAGテスト」

今回ご紹介したハイブリッド検査はいかがでしたか?皆さまが実際に使用している検査機の特徴を改めて考えて、課題をどの検査手法で補うか考えるきっかけにしていただけると嬉しいです。

次回は、いま話題の「Python」で動かすJTAGテストについてご紹介します。さまざまなウェブアプリケーションの開発言語として使われているPythonプログラム言語ですが、実はJTAGテストでも使えます。どのように使用できるか、基板のデバッグやテストでどのように使用できるかをご紹介します。

 
第1回 試作基板のBGA部品が動かない!?
第2回 BGAのはんだ不良を見つける。本来のJTAGとは?
第3回 試作基板のデバッグで困らない。テスト容易化設計の5つのポイント
第4回 テスト範囲を最大化する「DFTサイクル」とは
第5回 テストパッド削減とデバッグに役立つJTAGテストの活用事例
第6回 BGA実装基板の検査の課題を解決したJTAGテストの活用事例
第7回 「JTAGテストとHALTを活用した品質保証の取り組み」
第8回 実態調査から見える実装基板のトレンドと検査の課題
第9回 デバッグとテストの課題を解決する検査手法

 
 

谷口 正純 執筆者プロフィール
谷口 正純(たにぐち まさずみ)
アンドールシステムサポート株式会社

入社後、組込み機器、産業機器の回路設計を担当。現在は、JTAGテストツール、自動テスト用のスイッチ&センサエミュレーションのマネージャとして、お客様の基板テストの改善活動を支援している。
また、エレクトロニクス実装学会において、検査技術委員会の副委員長、バウンダリスキャン研究会の幹事として、JTAGテスト技術を通じて日本のモノづくりの改善活動を推進している。

 

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