第1回: 「マイクロ波/ミリ波ワークショップ」を初開催

様々な製品に搭載される機会が増えている無線回路。しかし、それらの製品を設計する際に様々な問題に悩まされる設計者も多いと聞きます。そこで先日開催された「マイクロ波/ミリ波の設計&測定セミナー」では、参加者の皆さまが日頃抱えているマイクロ波・ミリ波に関する悩みについて、セミナーの講演者を招いてパネルディスカッションする場を設けました。その模様をご紹介します。


 

マイクロ波/ミリ波の設計&測定セミナーとは

みなさん、こんにちは。図研テクニカルセミナー事務局です。
3月4日に「マイクロ波/ミリ波の設計&測定セミナー」を開催しました。日本最大級の計測サイト内で開催されるセミナーでは、毎回施設の見学をプログラムに含み、受講者方々からご好評いただいております。
昨今製品に搭載する機会が増えている無線回路では、CAD/CAE活用や無線測定の技術がリードタイム短縮のカギとなります。そこで今回のセミナーでは、最初に「最新の携帯端末の通信とその性能」について拓殖大学 産学連携研究センター 副センター長(電子システム工学部 准教授 博士)前山 利幸 氏からご講演いただきました。続いて、図研からは「CR-8000を活用したRF設計のヒント」と題して無線回路の設計に便利なDesign Forceの配線機能や解析連携の紹介、EMC問題などに触れた説明をしました。そしてマイクロウェーブファクトリー株式会社 櫻井氏から、IoT/M2Mになくてはならない測定技術である「OTA測定の重要性」と、測定技術からみた「ミリ波測定の実際」について、車への搭載で注目されている衝突防止ミリ波レーダーを例に現場の視点で講演していただきました。
さらに、今回初の試みとしてマイクロ波/ミリ波ワークショップを実施しましたので、その模様をご紹介させていただきます。
 

マイクロ波/ミリ波ワークショップを開催

このワークショップでは、事前に受講者の方々に「マイクロ波・ミリ波」に関することで日頃悩んでいることをお聞きし、そこからテーマを設定してディスカッションを行いました。(図1)
 

ワークショップテーマ

図1 ワークショップテーマ


 
ここでは、テクニカルセミナー事務局からみて、印象に残った内容をご紹介します。まず最も印象が残ったものは、「2、通信モジュールを購入して製品に実装したが、仕様通りの無線性能が取れず困ったことがある」のところで櫻井氏が話された内容です。
 
“(製品開発では)構想設計がとても大事。もしその製品で無線性能をしっかり出したいのであれば、製品デザインからアンテナ位置を検討するぐらいの意気込みが必要となる。さらに言えば、無線・アンテナの設計担当は製品デザインそのものにもかかわって、製品の中に置くアンテナの位置、基板形状や各主要部品の配置などについて設計初期にすり合わせるべき、この設計いかんによって無線性能がしっかり確保できるかが決まってしまう。逆に、デザインや基板形状が決まった後に、製品内の隙間に無線回路をおくような進め方の場合は、いくらアンテナやRF回路を変更しても無線性能向上には限度がある。”
 
この内容は、まさにマイクロ波・ミリ波を扱う製品を開発する上で、最初に意識しなければいけないことだと思います。つまり、無線性能を確保するには、製品開発を行う設計プロセスから見直す必要があるということではないでしょうか。
 

RF測定の難しさ

次にご紹介したいテーマは、「1、RF回路の測定」です。これは、今回参加していただいた中で約1/3の方がRF計測の実測経験が無い方だったことと、おそらくClub-Zの読者の皆様も経験されている方がそう多くはないのではと思い、ご紹介します。
このテーマでは、まず、パネラーよりRF計測の難しさをイメージしていただくよう、次のような解説を行いました。
・ デジタル回路の測定で使うオシロスコープやロジックアナライザに相当する計測器は、RF回路の測定ではネットワークアナライザなどになる。
・ オシロスコープは、測定したい箇所にプローブをあてれば測定値が簡単に得られるが、ネットワークアナライザでは同軸ケーブルを利用しインピーダンスを配慮しておかないときちんと測定できない。また専用治具を用いないと測定値の再現性が得られないこともある。
・ 計測では同軸ケーブルを曲げただけで位相が動いてしまう場合があり、測定系の設置方法にも気を使うべき。また、ミリ波の計測では、同軸ケーブルよりも導波管を使うことが多く、さらなる配慮が必要である。
 

測定器の種類

測定器の種類


 
 

マイクロ波とミリ波をどう使い分けるか

マイクロ波とミリ波のそれぞれの利点、どういう使い分けをするかについても、テーマとして挙がっていましたので、次のような解説を行いました。
・ 周波数帯域の使い分けは、通信システムとしての要求や、法的な要求による。
・ 次世代移動通信システムである5G方式は、通信速度向上が求められているため、通信の伝送容量が増やせるミリ波帯たとえば70GHzが検討されている。しかしミリ波では電波の飛びが悪く、キーデバイスの価格が高いという課題もある。

電波の使用状況

電波の使用状況


 


今回は、ワークショップで解説、ディスカッションされたテーマの一部を紹介しましたが、いかがだったでしょうか。ワークショップで上がった他のテーマについても、今後3回に分けてClub-Zでご紹介します。次回は、SI解析で使用するモデルに関するテーマを取り上げる予定です。
ご期待ください。
 

 無線機器の設計リードタイム短縮には測定が重要

無線機器の電波は、アンテナから放射されます。このとき、電波はアンテナ周辺環境である本体の形状、基板さらに部品からの影響を受けることを意味し、無線機器の構造が無線性能に直結するといえます。
設計リードタイムの短縮には、無線通信の性能を早い段階から実測評価し、設計の初期段階から製品構造を意識し無線性能を確保しておくことが重要です。
もし、製品の完成が近いときに無線性能の改善を行なおうとしても構造そのものがアンテナに対して影響を与えていた場合、性能向上は困難です。
八王子テストラボでは、このような設計の初期段階からの測定をお手伝いします。また、スタッフは全員アンテナ設計に知見があります。ラボを利用頂き、設計リードタイムの短縮につなげてください。

マイクロウェーブファクトリー社 ⇒ http://www.mwf.co.jp/

 

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