第12回 実際の活用イメージが浮かぶ事例が多数! 久々の研究会に参加

 
久々となるトリリオンノード研究会のリアル会場にお邪魔し、概況や活動事例などを聴いてきました。展示会の図研ブースでしばしばLeafonyを使った各種成果物を展示しているので、それほどご無沙汰している認識はなかったのですが、編集局の取材としては実に4年振りでした。

 

会場となった東京大学 本郷キャンパス

 
最初に研究会代表 東京大学の桜井名誉教授から、Leafonyの概況として、同一マイコン(STM32 MCU)で動作する主要通信リーフが勢ぞろいしたこと(BLE, Wi-Fi, LTE-M, そして現在LoRaリーフを開発中)、農業用途で実績も出てきている小型ソーラー電源リーフの登場。東電設計社による鉄塔傾斜監視システムの実証実験が半年前からスタートし、順調にデータ取得できていること。MCPCナノコンWG内でのナノコン応用コンテスト最優秀賞、愛知工大チームの「車内置き去り防止システム」などが紹介されました。

 

Leafonyの概況を紹介する桜井名誉教授

 
続いて、IoT機器導入やWebシステム開発などを手がけるミットディア社より、VSCode上で動作しArduinoと互換性のあるオープンソースの組み込み開発環境「PlatformIO」にLeafonyのSTM32リーフが登録されたことで、安定した開発ができ、プロジェクトの共有もしやすくなった旨が紹介されました。また冒頭桜井教授も触れられた新しいWi-Fiリーフについて、既存リーフに比べ電力とサイズにこだわったことや、センサーデータをGoogleスプレッドシートに直接アップロードできるアプリケーション。そして開発中のLoRaリーフでは、数百m~数kmの長距離通信が可能になり、かつ1000mAhのリチウムイオンバッテリーで1年半動作することなどが語られました。

 

Arduino互換で、かつその欠点を克服できる新しい開発環境

 
以降、トリリオンノード研究会会員各企業・団体などから、今まさに旬のさまざまなLeaony関連トピックが語られました。ここではそのうちのいくつかをご紹介します。

「SmartBuzz 子供の閉じ込め検知システム」愛知工業大学

冒頭にナノコン応用コンテストの最優秀賞として紹介された事例です。モジュラー設計、小型軽量、低消費電力というLeafonyの特徴を活用できるものを検討している時に、送迎バス内への園児の置き去りによる死亡という痛ましい事件が複数あり、これを防止するシステムを作れないかと考えたとのこと。従来のものは本体価格が10万円前後し、施工も業者への依頼が必要だったそうですが、このSmartBuzzは2万円程度で、施工もシガーソケットに挿すだけになっています。

 

危険状況を察知するとLINEで通知される

 
そして、車内の温度上昇とWBGT(暑さ指数)の簡易推定により「熱中症リスク検知」とし、これにエンジン停止後の滞在時間を加えて「閉じ込め検知」を行うこと。今後の展望として、使用可能時間の向上、リスク検知の精度向上、さまざまな種類のリスク検知などを考えていることなどが語られました。

「IoT・ロボット教育用教材の試作」大和無線電機株式会社

近年のSTEAM教育の潮流を受けて、Leafonyを用いたロボット教材を試作したという事例です。教材に求められる条件として「多様な使い方を提供できる」「資料、事例が豊富である」「製品価格(教材費)が安価である」の3つを想定。それぞれが独自に教材としての事例を豊富に持っているLeafonyとロボットとを組み合わせることで、使い方の幅が広がることや、ブリッジボードのみ製作することで全体のコストを抑えられていることなどが紹介されました。
※STEAM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Arts(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)。論理的思考力を重視することで、今後のICT社会に順応した競争力のある人材に育てる趣旨で2000年代からアメリカで始まった教育方針

 

小学生向け教材だが、企業からの引き合いも多いとのこと

 
なお、Leafonyを搭載した実装基板は最初から拡張のためのスペースが空けられており、例えば複数のMCUを積んで連携させることなども想定されていること、将来的には群制御による複数ロボットでのダンスや友達のロボットとの会話、メタバース連携の構想なども語られました。

「Leafonyとはんだ付け不要基板ジョイント技術:活用の舞台裏」有限会社ケイ・ピー・ディ

設計にCR-8000 Design Forceが用いられ、はんだレスの基板ジョイント技術により製作されたLEDCubeについては、日本MID協会定例講演会のレポートで既報の通りですが、今回はトリリオンノード研究会なのでよりLeafonyをフィーチャーした内容となり、当初はArduino Unoだった部分がMCUリーフとUSBリーフに差し替えられた経緯なども紹介されました。

 

スライド左下にArduino Uno、右下にLeafonyが見える

 
教育関連のトピックとして、ある大学の教育学部との共同研究について紹介されました。小学校の授業でのLeafonyおよびLEDCubeの利用において、学校指定のPCがChromebookでインストールアプリに制限がある中で、Googleスプレッドシートを活用したことが語られ、また教育現場への適用の可能性から、LEDCubeアカデミック版の示唆もありました。

「Spresenseにより広がるLeafonyの世界」ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社

低消費電力のIoT用ボードコンピュータということで、一見競合しそうなプロダクトであるSpresenseについて、それぞれの強みを活かすことでLeafonyの世界が広げられるのでは、という提案が行われました。まず、高性能収音、高感度カメラ、GPS、AIといった特長を持つSpresenseでの各モジュールの活用事例が語られました。

 

SpresenseとLeafony、それぞれの強みと共通項についての紹介

 
続いて、ArduinoやQwiic、Groveなどのさまざまなエコシステムとの連携がある中で、Leafonyとも繋ぐ旨、そしてそのための拡張ボード(ケイ・ピー・ディ社が製作)、およびソニーネットワークコミュニケーションズ社により用意された簡単にニューラルネットワーク設計ができる環境「Neural Network Console」。そしてそれらを用いて、Spresense側のAIカメラで捉えた数字を推論処理(例えば”5”らしさが99%である)した結果を、Leafony側に受け渡すアプリケーションデモが紹介されました。

最後に懇親会・意見交換会が行われ、研究会メンバー同士の活発な情報交換や、各社のプレゼンで紹介されたシステムの実機デモなどにより、大変な盛り上がりを見せました。

 

大和無線電機社ブースで愛嬌たっぷりに歩いていたロボット君

 
以前研究会を取材した際にもさまざまな活用例が発表されていましたが、リーフのバリエーションや開発・検証環境、他システムとの連携などが充実してきたこと、そして研究期間を経たことなどで、全体を通してより実際的なソリューション、サービスを想起させる内容になっていた印象を受けました。
トリリオンノード研究会とLeafonyのさらなる発展に期待します。

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