第10回 普及期に入ったLeafonyの直近動向と、最新のナノコンコンテスト

今回は、昨秋以降の各種イベントへの出展やナノコンハンドブック第二版公開など、Leafony関連の動向をお伝えし、最後に現在鋭意エントリー受付中の「第2回ナノコン応用コンテスト」をご紹介します。

コロナ禍でも活発に行われていたLeafony関連活動

2019年度まではさまざまな展示会にLeafonyが出展されていたのですが、2020年度以降は新型コロナウィルス感染の拡大に伴いリアルイベントが相次いで中止となり、直にLeafonyに触れられる機会が激減しました。しかしながら、各社のプライベートイベントなどでオンライン開催が定着し始めると、一般展示会へもそのスタイルが浸透していき、Leafonyの登場機会も再び増えてきました。2020年10月には「CEATEC 2020 ONLINE」のNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)ブースに出展、同年12月には東京都立産業技術センター主催でLeafonyをテーマとしたオンラインセミナーを実施。

また、Leafonyを含むナノコン、およびLeafony自体の普及・研究活動も、コロナ禍にありながら活発に行われており、連載第二回で紹介したモバイルコンピューティング推進コンソーシアム(以降、MCPC)が2020年12月に実施した「第一回 MCPC ナノコン応用コンテスト」では、多数の企業・大学からのエントリーがありました。また、2021年2月にトリリオンノード研究会の定期発表会にて実施されたLeafony応用コンテストは、Club-Z編集局もオンライン視聴しましたので、その際のアップデート情報と、コンテストからピックアップした2作品を次章以降でご紹介します。

こうした状況の中、4年間に亘ったNEDOプロジェクトの総仕上げが行われ、前期末で無事完了となり、Leafonyは本格的な普及期へと入りました。現在はさらなる高機能化・低消費電力化を目指したSTM32リーフの開発や、海外展開(北米)に向けた準備などの活動を行っており、そしていよいよ8月には、今期のトリリオンノード研究会が開催されます。

Leafonyアップデート情報:高性能マイコン搭載、新リーフ登場!

本年2月の発表会で、32bit、512kB flashメモリの高性能マイコンが搭載された新リーフ「STM32 MCU」がお披露目されました。これまでの8bitのMCUに対して、格段に処理速度が向上し、メモリも10倍以上に! それにもかかわらず、これまでと同じ1円玉サイズで、電池で動く低消費電力というLeafonyならではの特徴は維持されています。この高性能マイコン搭載リーフの登場により、Leafonyの活用範囲がさらに広がっていくでしょう。
ここでまず、この新リーフで、「温湿度・電池残量を不揮発メモリにログしておき、それを一定時間ごとにスマートホンに一方的に送信する」という、Beaconモードの活用事例が紹介されました。

 

MCUリーフ

 

定期発表会でのLeafony応用コンテスト

次に、この日のメインイベントである応用コンテスト発表会に移りました。この回ではKDDI社が協賛しており、同社製のLTE-M通信機能を持ったリーフや、前出のSTM32 MCUリーフなどを用いたLeafony活用事例を募りました。大学・個人・企業から計10件の事例が発表されましたが、その中からLeafonyの今後の可能性を強く感じた2作品をピックアップしてご紹介します。

 

【作品1:都市センシングに有効活用!「触れる暑熱環境シミュレータ」】
慶應義塾大学 厳研究室

猛暑の日が増えてきた近年、「街のどこが暑いか教えてくれる地図」はないか?というニーズを受けて、都市センシングにLeafonyを活用した事例です。すでに実用化され、東急コミュニティ様協力のもと、東急田園都市線のたまプラーザ駅とその周辺商店街にLeafonyが数カ所設置され、環境情報のセンシングに活用されています。そのセンシングデータ(温度、湿度、CO2、照度)はWebで公開(https://geocps.azurewebsites.net/tamaplaza/)され、リアルタイムで見ることができます。それだけではなく、その情報を利用して住民が都市改善について議論できるように、「触れるGIS(地理情報システム)」として一日の暑熱環境の変化を建築模型上で可視化し、屋上緑化の効果などをシミュレーションできるような仕組みに仕上げています。
通常、街中に暑熱センサを設置する場合、電源供給が課題となりますが、Leafonyを使えば超低電力電池駆動型センサが実現できるので、最適なのです。そして、KDDI社が提供するLTE-Mリーフも活用することで、データ通信の問題もクリアしています。
これからのスマートシティの仕組み造りにもLeafonyが有効であることを示した作品でした。

 

触れる暑熱環境シミュレータ

 
【作品2:電池駆動LeafonyがエッジAIに近づいた!「深層学習で人物検出・クラウド管理」】
慶應義塾大学 石黒研究室

いまや、AIによる画像認識は身近なものになっていますが、電池駆動低消費電力のLeafony上にこの仕組みが実現されたことに価値があると感じた作品です。
まずSTM32リーフ上で、カメラ画像を深層学習による人物検知にかけます。その結果をクラウドに転送して、グラフ描画する仕組みになっています。STM32での人物検知にはSTマイクロ社が提供するAI用プログラムを用いており、その後LTE-Mリーフを介して、4G-LTE回線経由でAWSにデータ転送し、AWSのIoT coreの機能を活用して、結果のグラフ描画を行っています。このように人物検知までをSTM32上で済ませてしまうことで、データ転送量の削減にもつなげており、クラウドサービスを有効活用することでアプリケーション側の負荷も省けています。
まさにLeafonyを使ってエッジAIを実現した作品であり、Leafony×AI、Leafony×クラウドサービスと他のサービスとをうまく組み合わせることで、Leafonyの可能性が無限に広がることを感じました。

 

電池駆動LeafonyがエッジAIに近づいた

 

「ナノコン ハンドブック」第二版を公開

さて、ここからはMCPCナノコン応用推進WG主査で、東芝インフラシステムズ株式会社の利光より最新情報を2つお伝えします。
最初に、私が執筆した第二回記事でご紹介しました「ナノコン ハンドブック」の第二版についてです。超小型、バッテリー駆動、モジュール化といった特長を持つデバイスとして定義した「ナノコン」を、多くの方に知ってもらうべく活用事例などを掲載したA5サイズの小冊子でして、初版は5事例と、Leafonyローンチ時点での「Basic Kit A1.0」と「Extension Kit A1.0」などについて紹介しました。

今回の第二版は、Leafonyの普及により多くのアイディアが試されたため事例が13件に増え、冊子自体のボリュームがほぼ倍増となるという嬉しい事態となりました。ぜひ多くの方に読んでいただき、「ナノコン活動」を始めるきっかけにしていただければと思います。(https://www.mcpc-jp.org/pdf/20210401_Nanocon.pdf

 

「第2回ナノコン応用コンテスト」へのエントリーを受付中

最後に、MCPCと東京大学桜井研究室が共催するナノコンを用いた技術・アイディアコンテストを紹介させてください。
昨年第1回が実施され、2軸傾斜監視IoTデバイスの研究開発で最優秀賞を受賞した東海大学をはじめ、8チームのエントリーがありました。

今回もLeafonyの使用を必須としていますが、前回以降に新規リリースされたリーフを用いることで、一層アイディアの幅が出てくるものと期待しています。なお、LTE-M通信用のリーフを使いたいチームには、KDDI株式会社様より貸出に対応していただけるので、ぜひ活用してみてください。Club-Z読者様の応募もお待ちしています。(https://www.mcpc-jp.org/pdf/20210701_NANOCON.pdf

 
 

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