近年再注目のMIDについての貴重な情報源! 日本MID協会 第21回定例講演会レポート

先日、日本MID協会の定例会が駒場の東京大学 生産技術研究所内で開催されました。前回に続き今回もブース設営と取材に半ば自動的にアサインされたClub-Z編集局ですが、せっかくなのでちゃんと記事にしますよとのバーターで快諾しました。

会場となった東京大学 生産技術研究所

警報級の大雨などと脅されていた11/17(金)、ズブ濡れにならないように早めに会場入りし、まずは協会のブースと図研のブースを設営しました(図研は日本MID協会の賛助会員であり、かつEL開発部シニアマネージャーの松澤が協会役員を務めていることもあり、協会の展示コンテンツを一部図研で保管しています)。
協会ブースでは、MID(Molded Interconnect Device、成形回路部品)の概説、協会の歩みなどのポスターと、協会監事が所属する三共化成株式会社様が製作されたMIDサンプルとして、LEDが組み込まれたものや、複雑な多面体に実装されたものなどが展示されました。
図研ブースでは、Zuken Innovation World 2023でもご講演いただいた株式会社FUJI様のエレクトロニクス3Dプリンター「FPM-Trinity」で出力した、超小型IoTプラットフォーム「Leafony」規格の基板などを展示しました。

日本MID協会ブースと図研ブース

13時より講演開始となり、まずは協会幹事の松澤よりCADの歴史におけるMID登場について、当時はフレキシブルの方が潮流となりいまいち盛り上がりに欠けたこと、しかし近年カーボンニュートラルの隆盛により再び注目されるようになってきたことなどが語られました。
そして、以降4つの講演で近年のMIDトレンドなどが発表されました。

 

講演1:『MID設計~レジスト~自動実装』3社による活動の報告

新しいMIDサンプル基板の制作を通してのプロセステストの成果が紹介されました。
基板・回路設計を大英エレクトロニクス様、回路成型、レジストを太陽インキ製造様、部品実装をFUJI様がそれぞれ担当し、2mm程度の細長い筒状の部品(その形状から「MIDポッキー」という名称)に回路とLEDを組み込み、光が明滅する機構をリードレスで実現しました。これまではSMDにリード実装をしていたものをMID化するにあたり、各工程で直面した課題と解決内容などを子細に説明しており、今後も3社で協力しながらこの活動を行っていく旨が発表されました。

MIDポッキー外観(左)と、さまざまな製品への組み込み例(右)

 

講演2:界面分子結合技術(IMB)の紹介

豊光社テクノロジーズ様より、MIDで用いられる部材へのめっき密着力向上効果が期待できる技術として使える界面分子結合技術(IMB、同社の登録商標)が紹介されました。
IMB剤はアンカー効果に依存せずに密着力を保つ接着・接合剤で、めっき、熱プレス、印刷、フィラー改善の4分野で密着改善が期待できるとのことです。表面粗化処理不要(=エッチングレス)でのめっき処理が可能で、7工程をスキップでき、水洗工程費用、大量の廃液・排水の削減にもなります。将来的に無機物同士の接合への展開を目指すとのことです。

 

講演3:アディティブ・マニュファクチャリング・エレクトロニクスがもたらす 価値創造

FUJI様より、材料を付着させることで3次元形状データから部品を作る技術であるアディティブ・マニュファクチャリング、そして樹脂および導体をアディティブで製作できる同社のエレクトロニクス3Dプリンター「FPM-Trinity」が紹介されました。
基板設計CAD(CR-8000 Design Force)からFPM-Trinity用のデータ変換を行い直接投入・製造でき、その圧倒的な速さ(わずか1日)、プロセスがシンプルで環境にやさしいこと、配線形成能力が高く配線精度のバラつきが少ないことなどが説明されました。
MIDが3D回路on3D形状で工程別のライン生産、多量向きであるのに対し、FPM-Trinityは2D回路in3D形状で工程複合のセル方式、多品種少量向きであるという比較も紹介されました。2024年1月のインターネプコンで実機展示が予定されているそうです。

MIDとFPM-Trinityとの比較

 

講演4:【基調講演】マルチマテリアル AM(アディティブマニュファクチャリング)

東京大学 生産技術研究所 付加製造科学研究室の新野 俊樹教授より、AMの7工法の説明と、成形品の機能と電気回路の機能を実現するMID、そしてAM技術とMIDの組み合わせで「自由な形状と配線を持つMID」ができる旨が説明されました。
また、AM+LDS(Laser Direct Structuring, レーザー直接構造化)により、「最初に造形して後から活性化」から「”ちょっと造形して活性化”を繰り返す」というマルチマテリアルAMの流れが紹介されました。

この後、協会からのお知らせで、電子情報技術産業協会(JEITA)の実装技術標準化専門委員会での活動報告として、実装用MIDの価値と対価を現状よりさらに明確にすることで市場を活性化していく旨の発表、そして本年6月のJPCA Show 3D-MIDパビリオンへの出展報告が行われ、閉会となりました。

最後に、キャンパス内のレストランで参加者同士の交流を目的とした懇親会が催され、20回以上続いてきた本会のますますの発展を祈念して乾杯が行われました。
日本MID協会では、さまざまな活動を通しMID産業の普及・発展を目指しており、常時法人会員、賛助会員を募集しています。ご興味がおありの方は、ぜひ協会のWebサイトからお問い合わせください。

懇親会の模様

 

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