TOPPERSプロジェクトが育む学生たちの技術力と創意工夫
2024年12月19日コンテスト金賞受賞! ユニークなアイディアを具現化した無線コントローラ
11月にパシフィコ横浜でのEdgeTech+ 2024 の併催イベントとしてETロボコン 2024が開催され、プライマリークラス以上の地区大会からの選抜チームによるチャンピオンシップ大会、およびカンファレンスが行われました(ちなみに、図研の今年度新人2チームがエントリークラスにて優秀な成績を収めています)。
一方EdgeTech+会場内にあるTOPPERSプロジェクト(後述)ブースでは、同プロジェクトの会員企業・団体などが出展しており、社内関係者から「そこにDesign Forceで設計されたものが展示されている」「それがコンテストで金賞を獲ったらしい」といった情報を入手しました。そこで、表彰式が行われた会期最終日にブースにお邪魔し、受賞された四国能力開発大学校(以降、四国能開大)の学生さんご本人と、彼の所属チームを指導されたという先生にお話を伺ってきました。
TOPPERSプロジェクトとETロボコンとの関係
組込みシステム向けの国産OSとしてこの分野に大きな影響を与えたITRON。この ITRON をオープンソース実装するとともに、新しい要求に合致するように改良・拡張することで、組込みシステム技術と産業の振興を図ろうと活動しているのが TOPPERS プロジェクトです。EdgeTech+は、以前は組込み総合技術展(Embedded Technology Expo)という名称だった時期もあり、本展にTOPPERSプロジェクトが出展しているのは至極自然なことであると思われます。
ETロボコン参加チーム指導よもやま話
ブース取材に先駆け、午前中にETロボコン会場で、四国職業能力開発大学校の及川先生による「指導者視点からのETロボコンのチーム運営とTOPPERSコンテストへの挑戦」と題した講演を聴きました。同大でのETロボコン参加学生は、1年時にC言語基礎、マイコンプログラミング、フローチャート、Linux基本などを学んだ上で、2年時に4人程度でチームを組むそうですが、なんと毎年全員入れ替わるとのこと(ノウハウ伝承が大変そう)。「1人ずつに極力はっきりした役割を持たせる」「仕様規約は絶対」「安定稼働するシステムを目指す」「平凡でも正しく丁寧なモデル」といった方針など、指導者目線での興味深いお話が伺えました。
今回TOPPERSコンテストで金賞を受賞した内容とは
午後からブースで「TOPPERS活用アイデア・アプリケーション開発コンテスト」の授賞式が行われ、本人による受賞内容の紹介が行われました。田中さんが前回のETロボコンに挑戦した際、走行体に搭載したカラーセンサから取得したRGB値を拠り所として行う「ライントレース走行」という競技で、役割分担および各担当の業務の煩雑さによる難易度の向上やタイムロスを痛感。
そこで今回は、各役割と担当業務の最適化を目指し、無線コントローラを開発することにしたそうです。Wio Terminal と、HackSPi に搭載された Raspberry Pi との間を、XBee による無線通信で接続しており、ボタンの押下操作により RGB値を10回取得し、平均値の算出を行います。コース上の手の届かない場所のRGB値の取得を遠隔操作としたことで、試走時の限られた時間の中で効率的な調整作業が可能になったとのことです。
ソフト勝負のロボコンで、Design Forceの出番とは?!
一方で、ETロボコンはソフトウェアの優劣を競うコンテストであるため、組込み技術に知見のある同プロジェクトの会員企業・団体が多く参加していることも納得できます。訊けば、競技に出場するハードウェアは市販キットを使った規定のもので、全チーム同じとのこと。……あれっ、ちょっと待て。
編集局 :「Design Forceで設計された受賞成果物があるとの触れ込みでやってきたんですが…」
田中さん:「はい、こちらの無線コントローラの基板をDesign Forceで設計しました」
うむ、特段ハイエンドな感じではなくむしろシンプルなわけですが、ソフト勝負の競技向けですし、そこは納得ですね。
編集局 :「Design Forceの使い心地はいかがでしょうか?」
田中さん:「最初からDesign Forceだったので他との比較はできませんが、部品登録がしやすかったりして、使いやすいと感じています」
ありがたいお言葉です。先生にも伺ってみましょう。
編集局 :「学生さんは、いつくらいからDesign Forceを使われるのでしょうか?」
及川先生:「CADの授業は私が担当ではありませんが、現在の四国能開大の電子情報技術科では、基板設計に関する授業は2年次の4月からのスタートですので、そこからDesign Forceを使っていますね」
編集局 :「なるほど、では3年近くDesign Forceに慣れ親しんでいただける学生さんもいらっしゃるわけですね。それでは、今後の展望や図研への要望などがありましたらお願いします」
及川先生:「より広い層への普及を進めていただけるとありがたいです。学校教育機関はもちろんですが、MakerFaireなどに参加する個人開発者にもリーチするような施策を打ってもらえると、学生たちにとってより扱いやすく、今回のようなコンテスト向けへの活用もしやすくなりますので,ぜひご検討いただけると嬉しいです!」
普段カリキュラム内でDesign Forceを利用されている学生さんたちを指導される立場からの、貴重なご意見をいただくことができました。ぜひ、今後の普及活動の参考にさせていただきます。次回以降、四国能開大のETロボコンでのさらなる活躍も、期待しています。及川先生、田中さん、取材へのご協力ありがとうございました。