若きエンジニアたちの軌跡 横浜国立大の挑戦と成長

今回は、図研が協賛する横浜国立大学フォーミュラプロジェクトの活動について紹介します。
横浜国立大学フォーミュラチームは、今年の2023年大会にエントリーはできたものの、動的審査前に走行できる状態に仕上げることができず、大会会場での走行は叶いませんでした。
コロナ禍の期間中にEVクラスに移行し、車両製作を進めてきた横浜国立大学チーム。2023年大会を終えて今、フォーミュラ活動を振り返りどう感じているのか、メンバー5名に話を聞きました。

彼らの言葉から、フォーミュラ活動を通じてエンジニアとして成長する姿が垣間見れました。そして、企業が学生達のモノづくりを支援し大会運営を共に盛り上げていくことは、未来のエンジニア育成や輩出に大きな意味があると改めて感じることができました。

EVへの転換、コロナ禍に苦しめられた3年間
図研が学生フォーミュラの大会協賛した2019年、そこでICVクラス総合第2位になったのが、横浜国立大学(以下、横国)でした。同じ横浜地区で活躍する同校フォーミュラチームの存在を知り、翌年から協賛を始めました。
しかし、2020年明けより新型コロナウィルス感染が拡大し、同年の大会中止が決定。横国チームは、この期間中に将来を見据えてEVクラスへの移行を決断し、コロナ禍中に設計・製作の移行を進めることにしました。そして、2021年大会(静的審査のみ)にはエントリーせず、2022年EVクラス出場を目指して取り組んでいました。しかし、コロナ禍でメンバーが集まって活動することが難しく、新歓でのメンバー追加もうまくいきませんでした。そして、人員不足により設計が遅延し、EVクラスで提出が求められるESF(Electrical System Form※1)を提出できず、止むを得ず2022年大会も辞退することになりました。
ようやくコロナ禍が明けた2023年、新入生を迎えて心機一転で取り組んだ結果、苦戦したESFの提出を完了し念願の大会エントリーを果たすことができました。しかし、車検前に⾞両が完成したことを示す「シェイクダウン証明※2」を提出できず、大会会場で車両を走らせることはできませんでした。

※1 電気システムの詳細を示す設計関連ドキュメント
※2 ⾞両⾛⾏後、シャットダウンボタンを押してから電圧降下(5秒放電)する映像を提出すること・提出無き場合や動画内容に不備がある場合は、⾞両未完成として⾞検に参加できない。

大会エントリーはできたが出場できず。その原因は?

期日内にシェイクダウン証明が提出できなかったと原因について聞いたところ、スケジュール立てや工数見積もりの甘さをあげていました。

チームリーダー 青山さん(数物・電子情報系学科、3回生)
「計画立て方に甘さがあった。もう少し時間があればカタチになった。」

パワートレイン班リーダー 小林さん(機械・材料・海洋系学科、4回生)
「時間をもっと効率的に使えば良かった。初のEV出場で、開発でどのくらい開発がかかるのか見通しがつけることができなかった。他の大学に聞いてみるという方法もあったが、未知の壁に対して、対処方法を見出だせなかった。」

学生フォーミュラのEVクラスでは 静的審査※3の準備と併行して、ESFを作成し期日内に提出しなければなりません。これらの審査対応や車体製作においては、大会から公開される英語のレギュレーションを読み込む必要があります。このレギュレーションの把握、書類準備、静的審査準備、車体の設計・製作など大会出場まで、対応すべき作業をすべてやりきるには約20,000時間必要と言われています。横国チームの10名程度の人数では一人あたり200時間となり、大学の学業と併行して容易にこなせる作業量ではありません。チームメンバーが50人規模の大所帯のチームであれば、タスクを分担し、一人あたりの作業量は少なくなりますが、小規模チームであれば、人員不足が作業工程に大きく響きます。スケジュール管理をしていても、小さな不具合や遅延でも製作スケジュールを大きく狂わせてしまいます。横国チームのように、初めてのEVクラスで入学間もない1年生も戦力とした少人数のチーム編成ではなおさらで、このような結果も仕方なかったのかもしれません。改めて、大学の部活動として取り組むことの大変さや難しさを感じるところです。

車両の走行は実現できなかった横国チームですが、ESFの審査は通過できたので現地にチームピットを設置して、製作中の車両のフォローアップ車検を受けるができました。当日、彼らのピットでZUKENロゴが一番目立つ位置に貼られた車両を見れたことは、2年間彼らを見守り続けてきた図研メンバーにとっても非常に嬉しいものでした。

※3 コスト計算の妥当性を見る「コストと製造」、車両の製造・販売を含むビジネスプランを見る「プレゼンテーション」、設計の適切さや革新性・加工性などの「設計(デザイン)」の審査項目がある。

EVクラスの車両製作の面白さ

横国チームのEV製作は、過去のノウハウがないなかでの挑戦。モーターを駆動させるのも思うように進まず、電気回路の知識を得ながらの製作は苦難の連続だったようです。彼らにEVクラスへの出場やその車両製作についてどう思っているか聞いてみました。

勝永さん(機械・材料・海洋系学科、2回生)
「EVで良かったと思っています。ICV時代は過去の大会実績があり、上位を狙えたチームでしたが、EVでゼロからのスタートになったことで、チームの立ち上げ時期に携わることができ、そこに喜びもあります。これからの時代、エンジンからEVに変わっていく過渡期にEVに関わることができて良かったです。」

坂本さん(数物・電子情報系学科、2回生)
「ICVは、機械的な制御で目に見えてうまくいっているかいないかが実感できますが、EVは電気的な制御で、回路がうまくできているかどうかは、実際に動作させてみないとわかりません。そのため、問題箇所の把握に苦労しますが、うまく動作したときの達成感は大きいです。それがEVの面白いところです。」

フォーミュラカー製作なので、エンジン車(ICVクラス)への未練やこだわりがあるのではと思っていましたが、意外と学生達はエンジンかEVかよりもクルマづくりの面白さにのめりこんでいて、EVの製作をポジティブに捉えていました。一方、一部の学生からは「正直に言うとエンジンのクルマを作りたかった」という声もありました。

そして、彼らのEVへの挑戦を大きく後押ししているのは、部品の提供や設計のアドバイスをしてくれるスポンサー企業の存在です。
横国チームの車両では、バッテリーを自動車技術会経由で共創㈱、モーターやインバータ、ECUは、本田技研工業㈱から支給されたものを用いているそうです。本田技研工業㈱や日産自動車㈱からは、安全回路講座などEVクラスに挑戦するチーム向けに特別講座が設けられており、専門知識を持たない学生は、それらの講座を活用し必要な知識を補っています。

学生フォーミュラ活動を通じて得られるもの

青山さん:
「この一年間で、他チームは走行できる状態まで仕上げていたが、自分たちはそれができなかったことを目の当たりにして悔しかった。ただ、今年は昨年と異なり、ESFを提出した状態で大会に参加できたので、他チームと対等で話すことができ、製作に関する具体的な情報交換がチーム内の随所で見られたことは良かったですし、メンバーの学びも大きかったと思います。」

小林さん:
「私はパワートレイン班のリーダーとして、EV製作という未開の地に取り組んできました。日々わからないことの連続で手探りではありましたが、みんなで協力し合いながら開拓者として取り組めたことは良かったですし、ここで経験した苦労が今後役に立つと思っています。」

勝永さん:
「学生フォーミュラを通じて、忍耐力がついたと思います。電装設計を進める過程で問題箇所に対し、一つ一つ地道に対処していくことで、粘り強くなりました。市販車が当たり前に街に見られるなか、技術者の地道な作業の積み重ねで、実際にカタチにして動かしていること、その大変さを実感しました。」

このように、実際のモノづくりを通じた苦労や得た知識は、彼らの人生において大きな糧になるでしょう。そうして身につけた知識はきっと社会人になっても、困難に立ち向かう自信になり、後の人生のチカラになると思います。このような経験が学生フォーミュラの醍醐味であり、試行錯誤し自らのチカラで課題解決して、学びを得た学生を企業としても採用したいと考えています。だからこそ、企業と学生をつなぐ機会としても、この学生フォーミュラは非常に有効な場になっています。

図研では、チーム協賛として特別に電装設計CADのE3.seriesを提供し、活用していただくための講習会も行いました。しかし、E3.seriesはエンタープライズ向け製品であり、利用企業独自の設計図やノウハウを資産化し共有するためにデータ化し、登録できるようになっているため、ライブラリや部品登録から、細かく初期設定する必要があります。

その初期設定のハードルが高く、学生が限られた時間の中ではハーネス設計CADを使うことができず、ハーネス設計は部品間をとりあえず接続するだけで、品質面を考えた配線設計まで行うことができていないのが実態です。また、設計データを後世に残すという意識も低く、まずは目先の課題をクリアし、車を動かすことが最優先で、配線の良し悪しは二の次になってしまっています。その結果、EVクラスではノイズ問題で、うまく動かないというトラブルも起きているようです。EV移行が進むなかで、ノイズ対策が求められるはずですので、図研としてもE3.seriesを学生チームに使ってもらえるようなアプローチを今後検討していきたいと考えています。

来年の学生フォーミュラに向けて

横国フォーミュラチームは、現在製作途中のフォーミュラカーを完成し、試走会で走らせる状態まで仕上げて、今期活動を終了すると話していました。彼らの車両を走行する動画を記録として残し、学内や外部にも発信していくことが来年の新歓での部員獲得につながるでしょうし、人員不足の課題解決のためにも、今期中に走らせることをまず達成してほしいです。図研としても、当社ロゴをついたフォーミュラカーが走行する姿をぜひ見たいです。

今年、1回生でフォーミュラ活動に初参加された鈴木さん(機械・材料・海洋系学科、1回生)は、大会参加を振り返り、
「大会での他大学との交流を通じて、たくさんの刺激や学びがあり、来年は新たな技術の搭載にもチャレンジしたいです。大会を通じてできた他大学とのコネクションを使って、チーム交流で新たな知識も吸収したいです。」
と話されていて、現地での体験を通じて来年のリベンジに向けて想いを強くされたようでした。
こうして大会を経験した1年生、2年生が活動の中心になるので、今年の学びが来年のフォーミュラカーにどのように活かされる今から楽しみです。

図研は、このような未来のエンジニアの挑戦を支援するため、引き続き学生フォーミュラ大会の協賛を継続していきます。

インタビューに応じてくれた横浜国立大学フォーミュラプロジェクトのメンバー (上段左から)坂本さん、小林さん、(下段左から)鈴木さん、勝永さん、青山さん

 

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