編集長ヒルコの「もっと知りたいその話:TECHNO-FRONTIER 2018編」
2018年05月23日先月幕張メッセで開催された「TECHNO-FRONTIER 2018」では、1,000名を優に超えるお客様にご来場いただき、まことにありがとうございました!
今号から何回かに分けて、今回初の試みだったブース内プレゼンテーションで、特に人気を博したセッションを取り上げ、ヒルコが担当者にインタビュー。会場では語りきれなかった、読者の皆さまが「そこ、もっと聞きたかったんだよ」と思われる部分も含め、内容をより深く理解していただけるようにあらためてご紹介します。
第1回は、セッション番号”8”「『超流用設計』を始めよう! 回路ブロック運用で実現する設計標準化」です(プレゼン動画はこちら:YouTubeへリンク)。では早速、プレゼンテーションを作成されたEDA事業部のM本さんに登場してもらいましょう!
それではM本さん、よろしくお願いします! |
M本…って、なんですかその中途半端な正体の晒し方。 |
いやぁ、ちょうどいい落としどころかなと。時間もないので早速本題に入りますね! |
このプレゼン自体も流用設計では…と? |
そんなこと言ってません! いやいや、今回のプレゼンは出だしから切り口違うなって思ったんですよ。「機電一体」ニーズに伴い…って、これまでメカ設計主体だった製品群の開発現場に着目してますよね。実際に、こうしたお客様からの相談は増えているんでしょうか? |
そう、実際に増えてるんですよ。産業機器や車載機器などでは、IoT化や電動化により、製品の小型化・高機能化・省エネ化などの要求が進んでいます。そこで、製品ラインアップにセンサーや制御ECU、インバーターなどのエレクトロニクスコンポーネントを組み込んで、そうしたニーズに対応しなければならない状況になっているんです。BtoBはニーズが多様なので、自ずとバリエーションも多くなるし、厳しい品質要求も満たなければならない。そうなってくると、元々電気設計リソースが少ない車載・産業機器メーカー様などでは、できるだけ実績のある回路を使い回して、開発効率を上げたくなるんじゃないですかね。 |
「設計標準化」ってやつですね。それで、次に「流用設計における問題」を提起してますけど、わたし「設計データを個人ベースで活用」ってところが意外だなと思ったんです。だって、個人個人でデータ管理してたら、十分に活用できないですよね? それに、このご時世だから環境の構築にそれほどのコストが掛かるとも思えないし…。 |
そう思うでしょ? ところが、実際の設計現場の状況っていうのは、そうすんなり済まないところが結構あるんですよ。例えば、最終的なアウトプットを任意のサーバーに格納するルールはあるんだけど、そのルールが「製品の名前があって、アセンブリ名があって、その下にドキュメント、その下の構成は設計者依存」だったり。設計の版が変わった場合のルールがバラバラで、最新データが判らない。で、結局人に訊いた方が早いってことになっちゃう。 |
あー、すんごくわかります。ルールの信頼性が高くないとなったら、やっぱり不安だから人に確認せざるをえないですよねぇ。 |
あとは、仕掛かりだからって理由で個人がローカルで持ってるケース。そういうものは他の人からは見えないでしょ? となると、どういう経緯で最終的なアウトプットに辿り着いたかって情報もスコーンって抜けちゃってることが多いんです。 |
確かに、ちゃんと必要性なり重要性なりを説明されなければ、最終成果物さえ共有してればいいでしょ…ってな考えにもなりますよねぇ。 |
さらには、電気設計者が少なくて、CADも統一されていない場合っていうのもあります。CADはなんでもよくて、図面とネットリストとBOMがあればOKだというなら、CADデータは個人管理になりますよね? |
そうか、CADデータを共有しても、そもそもCADの種類が違うんだから意味ないってことですね! |
はい、そういうことです。ヒルコさんって、ボーッとしてるようで、実は地頭はよかったんですねぇ。 |
…あのぉ、素直に喜べないんですが。まぁいいです。それで、これら「流用設計の困り事」が、実は3つにカテゴリー分けされていたってところでは、へぇぇと感心しちゃいました。上の段が「データ共有とデータアクセス向上の問題」、真ん中の段が「回路標準化と設計情報不足の問題」、そして下の段が「トレーサビリティや鮮度維持の問題」…って、上手いことまとめちゃいましたねM本さん! |
やめてっ、なんだかヒルコさんの言い方、ものすごーく浅薄な感じがするから…。実際そうなんですって!ここはちゃんと伝えたいの。 |
解りました、マジメにやります。ただ、わたしが感じたのは、普通の「流用設計」と、図研が提唱する「超流用設計」との間に、ずいぶんと開きがあるんじゃないのかしら?ってことなんです。で、そもそも超流用設計に移行する前の流用設計、つまり現場でよく見られる「現実解」っていうのは、どういった状態なのかなぁって。 |
なるほど、確かに「一般的な流用設計」っていうものが比較対象としてないと、そこからどのくらいの差分があるのか、つまり正直なところ、超流用設計のハードルってどれくらい高いのか…ってこともイメージできないですもんねぇ。 |
そうそう、知りたいのはまさにそこで、ほんとに流用設計なんて現場でやられてんの?って。「普通の流用」がないんだとしたら、「超流用」なんてマヤカシじゃないですか! |
ちょっと、なんてこと言うんですかっ! ちゃんと説明してあげます。一般的には流用設計というのは次のどれかになるかと思います。「1. 一つ前の回路図を引っ張ってきて改版」、「2. シート単位」、「3. シートの一部分を切り出し」。超流用、つまり回路ブロック運用は、その延長にあります。切り出した回路をライブラリ化して、みんなで有効に使い回せるようにするんですが、そうなると「じゃぁ、誰が登録してメンテするの?」といった課題も発生してくるわけです。 |
おぉっ、簡潔に説明してもらってありがとうございます。やっぱりあったんですね、一般的な流用設計。それでもう一つ、こちらについてももうちょっとシンプルにしてもらえるとありがたいんですが…。 |
あぁ、「超流用設計(回路ブロック運用)イメージ」のスライドで皆さんに見ていただいたチャートですね。これ、そんなに難しい? |
いや、プレゼンを聴きながらであれば全体の仕組みは大体解るとは思うんですが、いかんせんこれって「完成形」じゃないですか? 最初からこうはならないですよね。いきなりこれ見ちゃうと、こんなの本当に実現できるのかなぁって…。 |
なるほど! あたかも忍者がジャンプ力を体得するために、麻を撒いて毎日飛び越えるように、少しずつステップアップしていく様子をイメージしたい…というわけですね! |
その喩え、よく解んないんですが…。 |
では解るように説明しましょう。概ね、次のように順番に進めていきます。
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最後のPDMというのは、チャートでいうとDS-2 Expressoですね。つまり、そのフェーズに至るまでは、お客様の設計環境自体に大きく手を入れるというよりも、効率よく流用設計するためのルールを決めて、環境の刷新に備えておくという感じなんですね。 |
そういうことです。ちなみにそのルール策定や、それに沿った各種準備にもコツがあったりするわけですよ。自社で全部やるとなったら途方に暮れてしまう場合もあるでしょう。そんな時も、お気軽に図研に相談いただければと思います。 |
あら、これまたキレイにまとめましたねぇ! ちなみに、当然この「超流用設計」は様々な製品の設計現場に適用できると思いますが、今回冒頭でBtoB製品開発について触れているので、最後にこうしたお客様特有の背景について、補足してもらえませんか? |
はい、喜んで。繰り返しになりますが、BtoBはニーズが多様なのでバリエーションが多くなりますし、品質要求も厳しいです。例えば車載機器であればQCDのうち、やはりQ:品質が最重要となります。そういう現場では、回路を関連ドキュメントと併せて流用する(共有、使い回す)ことで設計品質が安定します。加えて回路設計工数、検査/レビュー工数も削減できます。また、回路を共通化することで部品が標準化されて、調達コストや保守コストも削減できます。そしてさらには、設計を効率化することで、バリエーション開発や新技術の開発など、新しいビジネスに取り組む時間を創出できる、というメリットも出てきます。 |
なるほど! 製品分野によって最重要とされる要素や、重要度のバランスなどは異なるんでしょうが、仮に最重要要素に着目して超流用設計を目指したとしても、結果としては効率化の波及が多岐に亘って、様々なメリットが享受できるようになるわけですね。 |
いやぁ、ヒルコさんこそきれいにまとめましたねぇ。こりゃ、掲載と同時にお問い合わせがガンガン来ちゃうかもなぁ! |
うぅっ、最後にハードル上げてくれましたね…。そうなることを期待してます。 |
いつでもどうぞ。 |
というわけで、今回はClub-Z読者様には比較的なじみがあると思われる「超流用設計」について、BtoB視点や、ステップアップの概要などを含めて紹介してみました。気になった方は、ぜひ↓↓↓こちらから↓↓↓お問い合わせください。M本さんも喜びますので。
※実際のプレゼンで、「超流用設計(回路ブロック運用)イメージ」で再生した動画2本を、以下でご覧いただけます。
【回路ブロック登録】
1) 回路図の任意部分を枠で囲ってブロックとして出力、データベースに登録
2) 登録してよいかどうかの承認依頼
3) 検索する際に必要となる情報を入力
4) 関連ドキュメントをセットで管理
5) 「公開」することで他の設計者も見られる状態に
【ブロック設計】
1) ブロックダイアグラムを開いた状態で、回路ブロックを選定
2) その際、関連付けたドキュメントを参照しながら設計者が使用ブロックを判断
3) ブロックの過去Ver.との比較、差分確認も可能
4) 配置検討:部品を基板外形の中に置いていく
5) ブロック図が完成、ブロック内の情報を活用しながら詳細回路設計