人間との円滑なインタラクション、超低消費電力を実現する夢の3D積層チップの可能性に迫る

800名を超えるお客様にご来場いただいたこの度の「Zuken Innovation World 2025(以降ZIW)」、九州工業大学で人間知能システム工学を専攻されており、脳型計算機や知能ロボット研究の第一人者田向権(たむこう はかる)教授のご講演内容を、編集局でダイジェストしてご紹介します。

田向教授には、本年9月に開催されたシノプシス社のユーザー会「SNUG Japan 2025」でお会いしており、前年のSNUGでの基調講演の際に発表された「ホームサービス・ロボットの組込脳型AIを目指したレザバーチップ」の研究について、コンセプトや最新動向などを語っていただいた今回のZIW講演を、記事化するご相談をしていました。

冒頭の自己紹介・研究紹介の中で、生成AI分野の研究が米国主導になっている危機感と、一方で自動車やロボットなどでは日本にトップ企業があり、それらに直接組み込んで動かすエッジ指向AIの分野が、日本が採り得る最後のチャンスとなるのではとの考えを語られました。

続いて、教授が主指導教員を務める学生チームが堂々7度の優勝を誇る「RoboCup」での実績が動画とともに示され、チームが所属する「@Home」というカテゴリーが、「部屋の片付け」や「倒れている人の救護」、「人込みの中から依頼主を見つけて頼み事を聞く」など、人間とのインタラクションに重きを置いていることや、大規模言語モデルによって人間の言葉からロボットの行動計画を生成できることなどが紹介されました。

ここからがいよいよ核心で、AIの電力問題を解決するためには専用の超低電力チップが必要と考え、それを目指したのが「レザバーチップ」であること。少ない経験から環境特有の知識を学習していくことができる、海馬を模倣するなどした脳型AIのコンセプト、そして「夢の3D積層チップ」と称したその脳型AIチップで消費電力を現行の1/1000(100mW級)まで減らすという目標。レザバーチップがどのようなメカニズムで検出・認識・学習しているのかまでが子細に説明されました。

超低電力・超高効率なレザバーチップは、さまざまな分野での実装を想定
 

今回ZIWでのご講演録画を、11月13日(木)まで開催中のオンラインイベント「ZUKEN digital SESSIONS 2025(以降ZdS)」で配信することを快諾いただきましたので、レザバーチップにご興味をお持ちになった読者様は、ぜひZdSで全編をご覧ください。

【ZUKEN digital SESSIONS 2025 視聴登録お申込み・詳細プログラムはこちら
開催期間:2025年10月20日(月) 10時~、11月13日(木) 17時 終了予定
イベント期間中、24時間いつでもご視聴可能です。

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