第4回 こんなにあるの?スイッチモジュールの種類と選定のヒント
2026年07月28日
スイッチモジュールはどれを選べばいい?
前回は、自動計測を支えるPXIとLXIについてご紹介しました。
PXIやLXIで測定を自動化できることは理解できた。しかし、いざ製品を選ぼうとすると、SPDT、マルチプレクサ、マトリクスなど、多くの種類があり、どれを選べばよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
ピカリング インターフェース社では1,000種類以上のスイッチモジュールを提供していますが、重要なことは、「何を測定したいのか」「どのように信号を切り替えたいのか」を整理することです。
今回は、代表的なスイッチモジュールの種類と選定のポイントをご紹介します。
なぜスイッチモジュールが必要なのか
例えば、次のような計測作業、テスト作業を行う場合、プロービング(測定ポイントへプローブを当てる作業)、試験対象や計測器のつなぎ替えは大変な手間がかかります。
・基板上の30箇所の電圧測定
・複数製品の試験(試作基板から量産基板、市場不具合品のテスト)
・RF回路の評価(同軸ケーブルの差し替え)
もし30箇所の測定ポイントがあれば、
手順1 テスト条件の設定(スイッチボックス、コマンドなど)
手順2 基板上の測定ポイントを探す
手順3 プローブで接触する(ケーブルを繋ぎ替える)
手順4 計測器の操作と測定
手順5 計測結果の記録(1へ戻る)
を30回繰り返すことになります。もし、計測する基板が100枚あったら…
1箇所の測定に30秒かかるとすると、30点で約15分、100枚の基板では約25時間にもなります。これでは、貴重な技術者の時間が消費されてしまいます。
この作業を自動化するためには、PCから制御できるスイッチモジュールを利用して、計測器は接続したままで、測定ポイントだけを自動的に切り替えることが有効です。さらに、USBやLAN経由で制御できる計測器と組み合わせることで、ソフトウェアでスイッチを切り替えながら自動的に計測して、計測結果のログファイルを出力することができます。
まず覚えたい5種類のスイッチ構成
実際のテストシステムでは、よく利用されるのは次の5種類のスイッチです。皆さんはいくつのスイッチをご存知でしたか? 1つずつ解説していきましょう。

SPST・SPDTスイッチ
最も基本的なリレースイッチで、多くの測定器や装置にも採用されている一般的なスイッチ構成です。SPSTは、1回路のON/OFFを切り替えるスイッチです。主に、電源、負荷の切り替えなどに用いられます。SPDTは、1つの入力を2系統のうち、いずれかに切り替えるスイッチです。
利用例
・電源切替
・負荷切替
・信号ライン切替
マルチプレクサスイッチ
マルチプレクサスイッチは、最も分かりやすい構成です。複数の入力を1台の計測器へ順番に接続することができます。例えば、基板上の複数の電源を測定する場合、測定検査対象の計測ポイントをすべてマルチプレクサスイッチに接続しておき、デジタルマルチメータとの接続を順番に切り替えることができます。
このように、1台の計測器を複数の測定ポイントで共有できるため、高価な計測器を増設することなく多点測定を実現できます。一度に接続できる測定ポイントは1つですが、その分シンプルな構成で低コストに実現できます。
利用例
・マルチメータの多チャンネル化(電圧測定、抵抗測定)
・信号発生器の多チャンネル化
・オシロスコープの多チャンネル化(波形観測)
マトリクススイッチ
マトリクススイッチ最大の特長は、「どの信号でも、どの計測器へも自由に接続できる」ことです。スイッチモジュールの中で、最も柔軟性の高いスイッチ構成です。
行(Y)と列(X)の交点を自由に接続できます。最も自由度が高く、テスト作業を自動化する際に便利なスイッチモジュールです。例えば、「16個の信号」「4台の計測器」を自由に組み合わせて測定できます。マトリクススイッチは、測定ポイントが頻繁に変わる試作評価や故障解析などで特に威力を発揮します。
利用例
・基板評価
・機能試験
・故障解析
・半導体テスト
RFスイッチ
最近増えているのがRF評価です。Wi-Fi 7、Bluetooth、5G、車載Ethernetなど高速・高周波信号の評価では、信号品質を維持できるRF専用スイッチが必要になります。一般的なスイッチでは高周波特性が劣化するため、RF評価では専用設計のRFスイッチを使用します。RFスイッチモジュールには、SPDT、マルチプレクサ、マトリクススイッチの構成が用意されています。
実は「とりあえずマトリクス」が危険
初めて自動化を検討する場合、「何でもできそうだからマトリクスを選ぼう」となりがちです。しかし、コスト、サイズ、チャンネル数を考えると、「自由度が高い=最適」ではなく、実際にはマルチプレクサの方が適しているケースも少なくありません。
まずは「何をどう測るのか」を整理してからスイッチを選定することが重要です。スイッチ製品の選定時には、以下の5つを整理すると失敗が少なくなります。

スイッチモジュールは数多くありますが、「どの作業を自動化したいか」を整理することで、最適な構成は自然と見えてきます。まずは小規模な自動化から始めてみてはいかがでしょうか。
次回予告
「マトリクス?マルチプレクサ? あなたの装置にはどちらが最適?」
次回は実際のテストシステムを例に、性能評価、量産検査、故障解析などの用途別に最適な構成をご紹介します。ぜひ、ご期待ください。
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執筆者プロフィール 谷口 正純(たにぐち まさずみ) アンドールシステムサポート株式会社 入社後、組込み機器や産業機器の回路設計を担当。 現在は、自動テスト向けのスイッチングソリューションおよびセンサシミュレーション、JTAGテストツールのマネージャとして、テストおよび計測作業の自動化支援に取り組んでいる。 また、エレクトロニクス実装学会では、テストと計測の自動化を通じて、日本のモノづくりの品質と生産性向上に貢献する活動を推進中。 |



