第3回 PXI? LXI? 手作業、GPIBに替わる自動テストの仕組みとは

 

GPIBをまだ使っていますか?

計測作業を自動化するために「自動計測=GPIB(IEEE-488)」という時代が長く続いてきました。
GPIBに対応した計測器は、背面に台形のコネクタがあり、複数の計測器をデイジーチェーンで接続して、パソコンから遠隔で操作していました。
今もなおGPIBを使用している開発現場や製造現場は少なくありません。それには、次の理由があるようです。

・測定器の制御はGPIBで慣れている
・既存のプログラム資産を活かしたい
・新しい機器を買う予算が下りない

最近の計測器はGPIB対応製品が無くなり、LANコネクタが搭載されることが一般的になりました。また、現在でもGPIBを利用している現場からは、以下のような課題を聞くようになりました。

表1 GPIB構成における課題

 

測定自動化、どこから始めれば?

「GPIB、スイッチボックスから卒業したい」
そう感じたとき、まず直面するのは「何を使えばよいか?」という課題です。

・PXIとLXIってよく聞くけれど、実際どっちがいいの?
・今の測定環境にどうやって取り入れればいいの?
・大掛かりな設備更新が必要になるのでは?

このような不安を解消するために、自動測定を支える2つのプラットフォーム「PXI」と「LXI」の違いをご紹介します。

 

PXIは高速・同期に強いシャーシ型測定プラットフォーム

PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)は、PCのPCIバスを拡張した測定用規格です。パソコンを組み立てるように、PXIシャーシのスロットにPXIモジュールを挿入して構成します。テストに必要な機能をPXIモジュールで容易に拡張でき、次のような特長があります。

PXIの主な特長
・モジュールを1台のシャーシに集約できるため、省スペース・高密度構成に対応
・高速通信、トリガ同期、クロック共有などが可能
・スロット式で拡張がしやすく、装置全体の再構築にも対応

ピカリング インターフェース社では、1,000種類以上のPXIモジュールが揃っており、単純な信号の切替えからマイクロ波&RF信号の切替え、高電圧の切替え、大型マトリクス構成、センサーシミュレーションまで対応可能です。

図1 PXIを用いたシステム構成例

 

LXIとは? LANでつながる分散型計測のスタンダード

LXI(LAN eXtensions for Instrumentation)は、Ethernet通信をベースとした測定器の接続規格で、配線がシンプルで、ネットワーク上に柔軟な配置ができます。

LXIの主な特長
・一般的なLANケーブルで機器を制御・監視ができる
・制御用PCから離れた位置に機器を置けるため、空間の自由度が高い
・複数の測定器、電源などの機器を1つのネットワークで一元管理できる

図2 LXIを用いたシステム構成例

LXIは、LXIシャーシで構成するシステムとは別に、単体で導入できるLXI大規模スイッチマトリックスもあります。図3のLXI製品の例は、256ch x 4chの大規模マトリクススイッチです。単体で使用することができ、会社にあるLANで制御できる計測器と組み合わせて、すぐに計測作業を自動化する環境が整います。256chでは足りない場合には、3台連結して1024ch x 4chのマトリクススイッチを構成することもでき、半導体テストの現場で使われています。

図3 LXI大規模マトリクススイッチの例(60-553-002)

 

スイッチ製品で「手配線からの脱却」を

ピカリング インターフェース社は、PXI・LXI両対応のさまざまなスイッチ製品を数多く提供しています。これらを制御するためのスイッチ制御用のソフトウェア「スイッチ パス マネージャ(Switch Path Manager(SPM))」を使えば配線を自由にGUIから制御できるようになります。このソフトウェアは、Lab VIEWからも容易に制御できます。

図4 スイッチ・パス・マネージャ SPM

スイッチ パス マネージャ(SPM)は、測定の「見える化」と「自動化」を同時に実現できます。SPMの主な機能と特長は、下記の通りです。

SPMの主な機能
・配線図のようなGUIで接続状態を定義・保存・呼出
・誰でも使える直感的な操作で、属人化を防止
・測定構成の記録性と再現性が確保できる

 

小さく始めて、大きく育てる構成も可能

PXIもLXIも「いきなり大規模導入しなければいけない」わけではありません。最初からすべての作業を自動化しようとすると、大規模な開発になり予算も開発期間も必要になってしまいます。自動化を確実に進めるためには、最も手間がかかる繰り返し作業に絞り、小規模なところから試すのが成功の秘訣です。次のように、段階的に無理なくスイッチボックスの置き換えや計測作業の置き換えから始めると良いでしょう。

・LXIスイッチ1台から導入し、GUI制御を試す
・測定系をGUIで共有・保存する習慣を付ける
・ソフトウェアによる自動化、機器の増設を進める

GPIBのような過去の手法ではなく、「今から使える現代的な測定環境」を構築するためには、PXI・LXIは最適な選択肢になります。

表2 測定環境を検討する観点と推奨構成

 

次回予告:「こんなにあるの?スイッチモジュールの種類と選定のヒント」

第4回では、みなさまの製品基板と計測器をつなぐ「スイッチモジュール」についてご紹介します。今行われている手作業を自動化するためのヒントになると思いますのでお楽しみに。

   
谷口 正純 執筆者プロフィール
谷口 正純(たにぐち まさずみ)
アンドールシステムサポート株式会社
入社後、組込み機器や産業機器の回路設計を担当。
現在は、自動テスト向けのスイッチングソリューションおよびセンサシミュレーション、JTAGテストツールのマネージャとして、テストおよび計測作業の自動化支援に取り組んでいる。
また、エレクトロニクス実装学会では、テストと計測の自動化を通じて、日本のモノづくりの品質と生産性向上に貢献する活動を推進中。
 
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