第4回 5G(5th Generation)のOTA評価
2020年01月30日
今回は、ミリ波帯を使用する5G(5th Generation)のOTA評価についてお話しします。
5Gに向けた評価
5Gのサービスが間もなく開始されようとしています。5Gでは、Sub6と呼ばれる6GHz以下で使用される帯域と、高い周波数(ここではミリ波帯と呼びます)で使用される帯域とに分かれます。
(参照:https://www-file.huawei.com/-/media/CORPORATE/PDF/public-policy/public_policy_position_5g_spectrum.pdf)
特に5Gの中で、ミリ波帯を使用した場合のOTA試験が大きな課題となります。
周波数が高くなるミリ波帯でのOTA測定は、遠方界条件での測定が要求されています。一般的に遠方界での測定は、送信アンテナと測定物(DUT)とが、十分に距離を離した状態で実施される必要があります。
十分に距離を離すために、大きなサイズの電波暗室が必要であり、また、コンパクトレンジ測定システムのような比較的近傍でも遠方領域で測定が可能な技術が必要になります。
そこで、3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、電波暗室を用いた測定として、測定アンテナとDUTとの距離を十分に離す方法、コンパクトレンジを用いた試験システム(図2)と近傍-遠方変換などが議論されており、また、ランダムフィールド法では、ミリ波帯に対応した機器も販売が開始されています。
5Gでは、「第2回:LTEなどの無線システムの性能を評価するOTA測定」で説明したことと同様に、機器全体の総合性能チェックをOTA試験で実施する必要があります。
例えば、5Gで採用されるMassive MIMO は複数のアンテナで構成され、数十から数百のアンテナ素子を使用してデータを送信します。このため大規模化したアンテナアレー内の個々のアンテナ素子での通信に対してもOTA試験をする必要があり、測定規模が大きくなります。また、アンテナ端子が搭載されていないことも多く、その場合もOTA試験での性能評価が必要になります。
評価項目として代表的なものにはTRP/TIS、周波数偏差、空中線電力(帯域幅、スプリアス)などがあります。
小型デバイスに加えて、携帯電話などの基地局、車に搭載されている5Gなどの無線試験も同様にOTA試験が必要となり、また、電波暗室内での測定が必須となります。
マイクロウェーブファクトリーでは、下図のようなコンパクトレンジを開発しています。図2が再現されていることがお解りいただけるかと思います。
リフレクタとフィードアンテナが一体となり、従来より設置が容易にできるよう設計されています。対応周波数は28GHz帯、および、Sub6に対応予定です。
下記に、図3のシステムで測定したホーンアンテナの放射パターンの一例を示します。
ホーンアンテナ製造メーカでの結果とよく一致しており、コンパクトレンジが有効に動作していることが確認できます。
今回は、5Gアンテナ評価について、周波数やコンパクトレンジ法を用いたOTA測定方法などを述べました。
次回は、より高い周波数(ミリ波帯)の解説を続けていきます。
<参考文献>
3GPP, “TR 37.842 v13.2.0 TSG RAN E-UTRA and UTRA; Radio Frequency (RF) requirement background for Active Antenna System (AAS) Base Station (BS),” 2017.