圧倒的インパクトと表現力! LEDCubeを支える基板ジョイント導通技術

2022年11月10日(木)に、日本MID協会の定例講演会がハイブリッドで行われました。図研も講演および展示で参加しており、Club-Z編集局も現地対応と取材で現地入りしました。
前身の「MID協会」発足から四半世紀強、MID(Molded Interconnect Device)に関する最新情報の紹介や、国内外の他団体との交流促進などに努めてきた同協会では、昨年度より新たな取り組みとし、MIDの標準化を意図した「実装用MIDガイドライン作成準備PG」を発足させるなど、MID産業の普及、発展に資する活動を継続しています。

さて、その定例講演会の会場でお会いしたのが、1999年の創業より一貫して図研製CADをお使いになっており、CR-8000 Design ForceオプションのDRAGON EXの自動配線活用について寄稿いただくなど、古くからのClub-Z読者各位には馴染みの深い有限会社ケイ・ピー・ディの加藤木 一明 代表です。
図研 EL開発部の松澤が、ケイ・ピー・ディ様が今年度の「東京ビジネスデザインアワード」に応募されたと聞き、「もっと広めませんか」と日本MID協会幹事として招待したことで、登壇されることになりました。その注目のプロダクトが、今回の講演で紹介された「はんだ付け不要の基板ジョイント導通技術により実現したLEDCube」です。

日本MID協会 第20回定例講演会に登壇する、ケイ・ピー・ディ 加藤木代表

 
開発・基板設計・製造・実装を事業とするケイ・ピー・ディ様は、創業より葛飾区でしたが、現在東京理科大学葛飾キャンパスに入居されており、代表曰く「お客様の社内研究室のように、お気軽にお越しいただける環境・体制を目指している」とのこと。その姿勢に呼応するように、常々新製品や新技術などに関するお問い合わせがあるそうです。
読者の中には、「ケイ・ピー・ディといえば基板アート」と思われる方も多いでしょう。この基板アートには事業の中での機器開発・設計のノウハウが活かされており、また逆に基板アートでの気付きが開発の方に活かされることもあるとのことです(実は今回紹介された技術は、基板アートの一つである「とんぼ」を製作している過程で、「はんだを使わず、ジョイントで導通できるのでは」と閃いたそうです)。

バリエーション豊かな基板アート

バリエーション豊かな基板アート

 
さて、いよいよ今回のテーマである基板ジョイント導通技術についてです。この技術により製作されたLEDCubeは、コンパクトなボディの印象からはなかなか想像できない光量と、目まぐるしく変化する光り方により、相当のインパクトがあります。実際、これが光っているだけでお客様が寄ってくるという、最近の展示会での図研ブースのキラーコンテンツの一つとなっています。プログラミングによって色の変化や点滅などを自在に設定でき、デジタルサイネージのように文字でメッセージを伝えることも可能です。

LEDCube、動作の様子

幅1mmの格子状の基板内で交点となっている部分にLEDが設置されており、1基板5×5で25個、4層で計100個のLEDを光らせることができます。それらの基板を等間隔に4層並べるために4本の柱を用いているのですが、その基板と柱との接続部分がツメを受け側の口にカチッと挿し込む構造となっており、はんだ付けを必要としません。

パーツの状態から、ジョイントするだけでキューブ状に

パーツの状態から、ジョイントするだけでキューブ状に

 
このLEDCubeの設計もCR-8000 Design Forceで行われており、その背景や実際の設計の様子を加藤木代表に語っていただきました。

「LEDCubeは立体構造でかつデザイン性が強く、さらにははんだ付けが不要な基板ジョイントという新しい導通技術を用いています。非常に難度が高かったのですが、短期間開発が求められており、やり直しや後戻りがあってならない状況でした。

そうした背景の中では、Design Forceの3D表示機能は欠かせないものであり、部品配置設計の段階から繰り返し3D表示を活用しました。まずは、(基板ジョイントではなく)通常のコネクタを使用した時の単体イメージと、基板ジョイント導通技術を使用した場合とのイメージをそれぞれ確認したのですが、これにより基板製造や部品手配をすることなくこの導通技術の有効性が見え、開発を進める上での安心材料となりました。

コネクタ使用時写真と基板ジョイント導通技術

コネクタ使用時写真と基板ジョイント導通技術

 
また、一般的な3D表示では、部品配置のイメージ確認が中心となっています。ところがこのLEDCubeは筐体がない製品なので、見た目や格子間のLED配置といったイメージがとても大事です。そのため、基板外形形状に合わせてLEDの配置を3D表示で直感的に把握できるのは有効でした。結果的に、LEDの視認性がよくなる格子状の基板形状を選び、スペースを考慮してすべてのLEDを45度傾けて配置し、3D表示で最終確認しました。

その他、マルチボード表示機能では、LEDCube単基板だけでなく、基板ジョイント後の基板同士が組み上がった状態の完成イメージも、基板格子間のLEDの見え方などを含めて3Dで視覚的に確認することができました。この機能は、今後出てくる新しい技術や製品開発手法においても、製造前にイメージを視覚的に確認できる手段として重宝するだろうと考えています。

格子間から何段までのLEDが見えるか確認ができた

格子間から何段までのLEDが見えるか確認ができた

 
Design Forceのこれらの機能のおかげで完成したLEDCubeは、開発から約1年半が経ちますが、基本構造は変更しないまま、展示会でのアイキャッチ、教育教材での共同研究など多くの引き合いをいただいています。今後も、資産であるDesign Forceをフル活用して基板業界に貢献したいと考えています」

大きさや形状などの自由度も高く、またゼロエミッションやSDG’sなどの観点でも注目されるプロダクトとして、LEDCubeはまだまだ今後の応用・発展が期待されます。

さて、次回はさらに、最近のケイ・ピー・ディ様のさまざまな取り組みについてご紹介していきます。

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