第4回 モジュールの背後にある設計意図の伝承で設計品質の底上げを
2016年02月18日前回はModuleStationの活用例としてCR-8000 Design Gatewayの「シンボルシート」機能「階層ブロック」機能を使って回路を機能別にモジュール化する方法をご紹介しました。
今回は、モジュールの背後にある設計意図の伝承についてご紹介します。
Zuken Innovation World 2014、2015のアンケートで、エレキモジュラーデザインの実現を阻害する要因について訊ねたところ、大きく分けて以下の3つの回答を得ることができました。
1. モジュールの登録件数の拡充
2. モジュールの陳腐化対策・情報鮮度の維持
3. モジュールの設計意図の伝承
図研では、1.の課題に対しては、各デバイスメーカー様から提供いただいた回路モジュールを検索できるModuleStationを提供しています。また、2.の課題に関しては、ジェイチップコンサルティング株式会社の協力のもとに提供している全件調査ベースの電子部品終息情報提供サービスと、DS-2やDS-2 Expressoとを連携させたソリューションをご提供しています。
今回は、3つめの課題“3.モジュールの設計意図の伝承”について、ModuleStationで提供される回路モジュールデータとCR-8000を使ってどういった取り組みができるのかをご紹介します。
データシートのガイドラインを回路モジュールに落とし込む
連載第2回 でご紹介したように、ModuleStationでは回路モジュールデータに加え、データシートなどの関連ドキュメントも入手することができます。
例えば、このDCDCコンバータのデータシートには製品の電気的な仕様だけではなく、部品選定の計算式や、動作のキーとなるレイアウトガイドが記載されています。
このレイアウトガイドの内容を回路モジュールデータに設定しておくと、CR-8000 Design ForceのオプションソフトEMC Adviser Exで、基板設計や検図でのレイアウトチェックが簡単かつ効率的に実施できるようになります。
例えば図3のレイアウトガイドにある“ループをできるだけ太く短くトレースする”は、“ピンペアの経路を短くトレースする”、“ピンペアの経路を太くトレースする”に置き換えられます。今回は一例として、“ピンペアの経路を短くトレースする”をEMC Adviser Exの“ピンペア経路長”でチェックできるよう回路モジュールに設定をしてみましょう。
ピンペアの設定は、CR-8000 Design Gateway上で簡単に行えます。CR-8000 Design Gatewayのコンストレイントブラウザでピンペアを作成し、作成したピンペアに対して配線長を入力します。図4はICの出力ピンとインダクタのピンペアの設定例です。インダクタとキャパシタ、キャパシタとIC GNDのピンペア設定も同様に行います。
この設定を行っておくと、CR-8000 Design Forceに設定内容が引き継がれ、チェック項目を選択して実行するだけで、その項目に対するチェックが行われます。チェック結果はレイアウトとリンクして表示されるため、効果的かつ効率的なチェックが行えます。
このようにデータシートにある情報を回路モジュールに落とし込んで運用することでそのモジュールのキーとなるレイアウトチェックを、誰もがスピーディに漏れ無く行うことができるようになり設計品質が高まります。また、各設計者がその回路モジュールの設計のポイントを実務を通して身に付けることができますので設計者一人一人の知識の底上げと、設計技術の定着が実現し、結果として設計部門全体のレベルアップにも繋がります。
いかがでしたでしょうか。今回は、回路モジュールに関連ドキュメントのノウハウを落とし込んで活用することでモジュールの設計意図の伝承を実現し、設計品質の底上げを実現する取り組み例をご紹介しました。
簡単な操作を覚えるだけで設計者なら誰でも使いこなすことができるため、解析ツールなどと比べて社内展開と定着の障壁も低く取り組みやすいのが特長です。
技術伝承や設計品質の底上げを考えられているお客様は1度試してみてはいかがでしょうか。