CAD環境の運用支援は「必要なサポートを、必要な分だけ」

一般的にIT関連コストの約50%は運用コストだといわれ、多くの企業にとってそのスリム化は大きな課題です。一方で運用コストを単純に削減することは、サポート体制の脆弱化を招き、結果として業務品質の低下につながりかねないという問題があります。設計業務を支えるCADシステムでは、運用コスト削減とサポート体制維持のバランスに加え、運用改善を通じた業務効率化、業務品質向上への取り組みも考慮したコストとサポート体制の最適化が求められます。
今回は、このようなお客様の課題解決を支援している図研テックのCAD運用支援 「専任SEサービス」について、同社のSEと営業部門のマネジャーである今井・橋本両氏に語ってもらいました。

このCAD運用支援 「専任SEサービス」について、まずは概要を教えてください。

「専任SEサービス」は、図研テック設立以来のサービスメニューであるCAD運用支援に関する新しいサービス提供形態です。
従来、CAD運用支援は、
● 常駐型・・・派遣または準委任契約の下、図研テックのSEがお客様社内で常駐支援
● 請負型・・・請負契約の下、業務の一部を切り出していただき、図研テック内で作業、成果物を納品
この2つの形態でご提供していました。

今回、新たにご提案している「専任SEサービス」は、常駐型と請負型のハイブリッドの提供形態です。
お客様毎にお悩みや課題をヒアリングさせていただき、解決に必要な毎月の工数と訪問回数をご提案して、CAD運用全般を図研テックのSEがチーム体制を敷いてご支援します。

設計者からの問い合わせ対応、部品ライブラリ登録やリソースファイルのメンテナンスなどのデータ作成、操作マニュアルや運用手順書などのドキュメント整備とトレーニングの実施、カスタムプログラムの作成・更新など、CAD管理に関するあらゆる業務を、お客様の業務スケジュールに合わせてご支援することができます。また、ご支援内容は報告書にまとめて毎月レポートしますので、自社のCAD環境運用がブラックボックス化してしまう心配もありません。
現在の対象アプリケーションは、回路・基板設計CAD(CR‐8000 Design Gateway, Design Force)、電装設計CAD(E3.series)です。

どのような課題をお持ちのお客様にフィットするサービスなのでしょうか。

例えば、「設計者のCAD管理業務の兼務を解消したい」という課題をお持ちのお客様に、実際にご利用いただいています。
このような課題をお持ちのお客様は、比較的CADの運用規模が小さく、常時1人月以上の業務量が見込めないためCAD管理業務の専任担当者を置きたくても置けない、というお悩みを抱えている場合が多いです。運用規模が小さくても、CAD管理業務を兼務している設計者の方にとってみれば、それなりに負荷がかかる業務なので、「専任SEサービス」で「必要なサポートを、必要な分だけ」ご利用いただき、兼務を解消して設計業務に専念できるようになれば、お客様のメリットは大きいのではないかと考えています。
また、CADの運用規模ではなく、運用期間に目を向けてみると、「長年、CAD管理を担ってきたベテラン社員が定年を迎えるが、後任適任者がなかなか決まらない」といったお悩みをお持ちのお客様からも、数多くの引き合いをいただいています。
CR-5000のリリースは1994年4月、その頃にCADの導入に携わった方が、長年にわたって技術管理・CAD管理の中心的な役割を担っているお客様は、思いのほか多い印象です。
例えば、30代で自社の回路・基板設計の実務に明るく、社内の関係者とのコミュニケーションにも長けた方が、CAD導入を担当されて、その後の運用定着やデータ活用による改善活動を続けていた場合、雇用延長などを加味しても、そろそろ現役を退かれる時期に差し掛かっているのではないでしょうか?
CR-5000リリース当初と比較すると、現在はCAD自体が多機能化・高機能化していることに加えて、PLMやCAEなど周辺のシステムとの連携など、運用も複雑化・高度化しているため、「設計実務にもシステム管理にも明るい」といった条件で、後任者を立てることは簡単ではありません。まして昨今は「エンジニア不足」と言われていますので、条件を緩和したとしても「そもそも人手が足りない」といった事情から、社内で後任者を立てることができないお客様もいらっしゃると思います。
実は、「専任SEサービス」は、このようなお客様の要望にお応えするためのご提案内容を基に、正式なサービスメニュー化を行いました。
その他には、「CADのバージョンアップに必要な工数が確保できない」「事業ごとに異なるCAD環境を統一したいが、計画自体にも必要工数の確保にも不安がある」など、CAD運用業務に関してアウトソーシングを検討するきっかけになる課題をお持ちであれば、ぜひ、「専任SEサービス」もご検討の選択肢に加えていただければ幸いです。

 

常駐での運用支援とはどのような点が異なるのでしょうか。

大きな違いは「属人化しない」という点です。常駐支援する場合、お客様を担当する図研テックのSEの専門分野や経験内容、スキルレベルによって、ご支援できる範囲や内容が変わってしまいます。もちろん、最大限、お客様の要望に適う人選を行い、できる限りサービスが属人化しないように、SEのスキルアップ、マルチスキル化に取り組んでいますが、完全に属人化を回避することは困難です。
また、コスト面での違いもあります。常駐型の場合、どうしても1人月単位でコストが半ば固定費化したご提案になってしまいます。例えば、回路設計CAD、基板設計CAD、電装設計CADのサポート担当を各1名、新製品開発時期にはライブラリ登録の担当を1名追加で、など業務範囲やタスクに合わせたSEのアサインをご検討いただくよりも、年間のトータルコストで見ると、コストが削減できる可能性が高いです。
お客様にサービス提供する図研テックの立場としても、「属人化しない」ことには、大きなメリットがあります。我々として最も避けたいことは、お客様の要望にお応えできるSEが”いない”ので、ご支援できない、という状態です。一口に”いない”と言っても、単純に、ご要望に適う専門性・スキルレベルのSEがタイムリーにアサインできない場合や、専門性・スキルレベルは条件を満たせても、お客様の事業所まで通勤が困難である場合など、理由はさまざまですが、常駐を前提とせず、SE個人ごとの専門性やスキルレベルに依存しない=属人化しない形態で、お客様の要望に安定してお応えできるサービス提供形態が「専任SEサービス」です。

 

最近はCR-5000からCR-8000への移行に際しての依頼が増えていると伺いますが、
 具体的な課題や導入メリットなどを教えてください。

「CR-5000の運用が残ってしまっている」というお客様のよくあるお悩みの1つに、「自社でカスタムプログラムをいろいろと作ってしまったが、当時の担当者が不在で、仕様書も残っていない」というものがあります。
例えばCR-5000 Board Designer(以降、BD)の運用を前提に作られたカスタムプログラムを、CR-8000 Design Force(以降、DF)の運用に合わせて統廃合していくためには、お客様の電気設計業務のフローやルールを伺い、仕様書がなければカスタムプログラムのソースコードを紐解き・・・といった具合に、常駐型で支援する場合、図研テックとしても適任者の人選が難しく、プログラム開発として請負型でご支援する場合には、業務の切り出しの時点で、お客様の負荷が高くなってしまいます。
このようなケースでも「専任SEサービス」であれば、「BDからDFへの完全移行」といった、大きな枠組みの中で、カスタムプログラムの統廃合を含め、DFの機能を十分に活用した新たな設計環境の構築から定着、運用改善まで、図研の担当SEや営業とも連携しながら、幅広くご支援することができます。
図研テックは1997年の設立当初から、長年にわたって図研製CADのサポートサービスをご提供しています。関連子会社なので、当然といえば当然ですが、CR-5000とCR-8000に対する知見、カスタムプログラムの例に限らず、システムの移行や運用に関連したさまざまな課題解決支援の実績に基づいて、お客様に最適なサポートサービスがご提供できると自負しています。

CAD管理・技術管理部門の方にはニーズがありそうなサービスですが、
 設計者の方にとってはどうでしょう?

「現状、CADは普通に使用できているし、CAD管理・技術管理部門の体制にも不安はない。自社は当面問題なさそう。」と思われる設計者の方であっても、CAD運用に改善の余地があるのでは?という視点で、ご興味を持っていただけると幸いです。
一例として、目視のチェックリストの一部をDRC機能で引き取ることができた運用改善の事例をご紹介します。「DRC強化を行う前提として、部品ライブラリ登録基準の見直しとデータクレンジングを実施したことによって、検図だけではなく、部品検索の精度が上がり、大幅な設計効率改善ができた」という事例です。
このお客様の「専任SEサービス」導入の主なテーマは、バージョンアップに必要な工数の確保でしたが、バージョンアップのご支援をする中で、設計者から「目視の回路図チェックが手間」「部品検索の精度が悪い」といったお悩みを伺ったことをきっかけに、ご提案から実行までご支援できた一例です。
一概には申し上げられませんが、「専任SEサービス」を導入いただき、図研テックのSEが、お客様の電気設計業務を理解したうえで、客観的にCAD環境の診断からご支援させていただくことで、最新バージョンのCAD機能を活用した運用改善につながる可能性は十分にあると考えています。「CADの機能をフル活用できていないのでは?」や「もう少し設計効率を向上させることはできないか?」といった思いをお持ちの設計者の方にも、ぜひ、ご興味をもっていただきたいサービスです。
本稿をご覧いただき、ご興味をもっていただけましたら、まずは図研の営業担当者にご相談いただければ、「専任SEサービス」についてもご案内できます。担当者を直接ご存じない場合は、図研もしくは図研テックのWebサイトの問い合わせフォームより、「専任SEサービス」の詳細説明希望、とお問い合わせください。

(図研、問い合わせフォーム) https://www.zuken.co.jp/contact/

(図研テック、問い合わせフォーム) https://www.zukentec.co.jp/contact/

また、サービス説明資料は、図研テックのWebサイトに掲載しておりますので、併せてご覧いただければ幸いです。
(資料DLフォーム) https://www.zukentec.co.jp/entry_download/?doc%5B%5D=40681

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