狭間と狭間を陰で支える部品ちゃんの活躍により、流石電気では、中間ファイルを介したエレキ・メカの協調設計を実現していたと思われていたが、技術部門では、新たな壁に直面していた。
(狭間) 「はい。わかりました。12日水曜日の17:00ですね。では、よろしくお願いいたします。」(ガチャ)
『またレビュー会?』
(狭間) 「(あー。仕方ないだろ。みんな俺たちに期待しているんだ。)」
『・・・』
プルルルル プルルルル(ガチャ)
(狭間) 「技管の狭間です。18日ですかー、すいません、その日は既に・・・。はい、分かりました。では21:00からということで、よろしくお願いいたします。」(ガチャ)
『狭間っち、このまま一生レビュー会に参加するつもりなの?』
(狭間) 「(だって、そうしないと不具合が出ちゃうんだから。)」
エレメカの運用が一通り設計者に展開されたのを確認した後、技管からはレビューに参加せず、必要に応じてサポートを行う、という体制をとったことがあった。しかし、狭間と部品ちゃんが参加しなかったモデルでは、実機検証で発覚する不具合がしばしば発生した。設計変更後のデータを回路設計/機構設計の両部門間で連携することはできたものの、現状の3Dモデルでは表現できない、さらに詳細な部分での検証が、すべての設計者にできるというわけではなかったのだ。
それ以来、狭間と部品ちゃんはほとんどのレビュー会に参加していた。それは、設計部門からの依頼でもあり、彼も推進役として、失敗がないようにと思っていたからだ。その後もレビューの場では、部品ちゃんからの指摘がなくなることはなかった。これは、実際のところ、狭間と部品ちゃんが、不具合を防ぐ関所になっていたことになる。
『ちょっと試してみたいことがあるんだけど。』
(狭間) 「(なに?部品ちゃんの言葉がみんなに聞こえる方法でもあるの?)」
『違うわ。私を元の美しい姿に変えてほしいのよ。』
(狭間) 「(え?元の?美しい?)」
『そうよ!本当は私、こんなすんぐりむっくりした体型じゃないんだから!もっとスリムだし、それに足だって細くて長いのよ、あなたと違って。知ってるでしょ?』
(狭間) 「(何かと思えばそんなことか。。。はいはい、わかりました。でもこれからまたレビューだから。それ終わってからでいい?)」
『ダメ。今よ、いま!そうしてくれないと、私、レビューに出ないからね!』
(狭間) 「(えー、そんなワガママ言うなよぉ~。。。俺、実はメカCADは苦手なんだよな~。)」

(狭間) 「おし!これでいいだろう。もうこんな時間!急がなきゃ。」
会議室では、春モデルのレビュー会が行われていた。狭間は、対象機種のアセンブリデータを確認し、編集した電解コンデンサのモデルに差し替えて、レビュー会に持参した。
(狭間) 「部品モデルを少し編集したので、これでレビューしていただけますか?」
スクリーンにデータが映し出され、レビュー会が始まった。前回のイベントからの変更点を中心に、担当者からの説明があり、参加者による指摘が行われた。その途中、レビュアーとして参加していた機構設計の合田課長が割って入った。
(合田) 「狭間~。この電解コン、なんでピンクなんだ?」
(狭間) 「えっとー、、、」
『形状をリアルに表現したのよ!』
(狭間) 「(そうか。) なるべくリアルに表現しようと思いまして。」
(合田) 「ほ~。ま、色は別にして、確かに、足もついていて、電子部品らしくなっているな。これは、意味あるのか?」
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