『私は部品。電解コンデンサの3D電子部品モデルよ。まーいいわ、私ばっかりをジロジロと変な目で見てないで、この製品のアセンブリデータを見なさい。』
(狭間) 「(あ、はい。)」
『筐体内部の基板にコネクタが配置されているでしょ。あそこにあとから縦にケーブル挿し込むのよね?』
(狭間) 「(あー。そうかも。)」

『あれじゃ、隣の背が高い部品が邪魔して、指が入らないでしょ?こんなんじゃ挿し込めないわよ。それから、・・・』
矢継ぎ早に、いくつかの指摘を受けた狭間は、そのどれもがもっともな内容であったため、早く設計に伝えなければという気持ちで頭がいっぱいになり、少し前に抱いていた、このへんてこりんな部品モデルの存在に対する疑念は、もうどこかへ捨て去ってしまっていた。
(狭間) 「ありがとう、部品ちゃん。」
この後、狭間は部品ちゃんに指摘された内容をまとめ、担当者に報告するとともに、関連メンバーに修正後の3D検証会の案内を出した。
2週間後
。会議室では、3Dデータを使用した2回目の検証会が行われた。修正前と後の3Dデータを用いて、細川、田中から、修正ポイントが説明され、参加者は一様に納得した。
(合田) 「前回の検証時に指摘した項目以外の変更もあったようだが?」
(細川) 「あの後、狭間からいくつかの指摘を受けました。その対応です。」
(田中) 「3D化したといっても、まだ私たちも気づけない箇所があったんですね。狭間くん、ありがとうございます。」
(合田) 「そーなのか!やるじゃないか、狭間。サッスガ!」
(狭間) 「いやいや、それほどでも・・・」
(合田) 「ガーハッハー。まーお前じゃなくて、データが見やすくなったってことだ。ガーハッハ。」
(谷川) 「まー彼もこう見えて、回路設計部の私の下で3年半の経験を積んでいますから。指導が間違ってなかったんでしょう。オホホホホホー!」
『このうるさい大男とちっちゃいオジサン、
感電させてもいい?
』
(狭間) 「(えっ!だめだめだめだめっ!)」
『あれ?狭間っちー。修正した箇所だけど、今度は動かした部品と、ネジの位置が近くなっていないかしら?』
(狭間) 「(あっ、本当だ!あそこには部品のリードがあるから、ネジ部品とのクリアランスを取らないと。分かりづらくて見落とすところだった。。。サンキュー、部品ちゃん!) あ、あのすいません、そこにある部品、本来は、リードが出ているんですけど、端にあるネジとのクリアランスが保てていないのではないでしょうか。」

(細川) 「あー本当だ。危ないな。」
(田中) 「狭間くん、すごいじゃなーい。リード形状なんて見えていないのに、どうしてわかるの?」
(狭間) 「えっ!いや、たまたまですよ~。」
(細川) 「サッスガ!じゃ、部品位置とネジ位置の調整はやっておく。他にはないか?」
『大丈夫だと思うわ。』
(狭間) 「はい、大丈夫です。」
このモデルで実施した3Dによる検証会の成果は、各部門内でも評判となり、3Dによるエレメカ協調設計が、社内に広まっていくことになる。
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