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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

Zuken Innovation World 2013 Report

シーメンス様が語る 鉄道分野で求められる電気設計システムとは
「高い安全性を、長い製品ライフサイクルにわたって提供していくために」

2013.10.31


「Zuken Innovation World」では、海外のユーザ様の事例も紹介しています。どの産業においてもグローバル化が進み、使う道具(ツールやシステム)には差がなくなりつつありますが、「何を目指して、どう使うか」、という点では個性も出ます。ユニークな発想に刺激されたり、意外と同じことに苦労しているのを知って安心(?)したりできるせいか、例年海外ユーザ様の講演は大変人気があります。

今年は、その中から鉄道システム大手のシーメンス様よりCR-5000を中心とした電気設計システムの活用事例を発表いただきましたので、エッセンスを紹介します。

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■世界の鉄道ビジネスとシーメンス様のプロフィール
人々の交通手段として自動車や航空機に一旦は明け渡すと思われた鉄道ですが、日本の新幹線の成功により、1980年代より欧州でも高速鉄道が見直され、アジア圏でも大規模な鉄道網が構築されつつあり、高速鉄道ビジネスは新たな成長産業として注目されています。

シーメンス(鉄道部門)様は、カナダのボンバルディア、フランスのアルストムと並んで、世界の三大メーカの一角をなし、この3社で約60%のシェア(高速鉄道だけでなく鉄道全体で)を占めています。先進国だけでなく新興国での鉄道整備のビジネス案件は活況を呈し、目の離せない産業の一つとなっています。

シーメンス様の鉄道部門は、車両と制御システムから構成され、今回は制御システムのプロジェクト・マネージャであるフリューゲル様よりご講演をいただきました。

ちなみにフリューゲル様は初来日ですが、もちろん大の鉄道ファンでさっそく日本の新幹線に乗ってみたとのことでした。

■鉄道システムに求められる設計環境(講演の概要)
講演いただいた内容は下記のようなポイントでした。要所要所で図研製品、Lightningも含めたCR-5000システムの各ツールをどのように活用しているか紹介いただきました。

鉄道制御(オペレーション・コントロール・センター)は複雑でかつ高度な信頼性が求められ、SIL4(*)という基準を満たす必要があるため、電力系統やシステムダウンを引き起こすような重要な機能について二重三重にリスク回避しなければなりません。また、連邦政府の認可を得るにも、アーキテクチャレベルからプリント基板まで審査されるので、安全性に対する取組は徹底して行なう必要があります。

*:SIL(シル)とはSafety Integrity Levelの略で、SIL4とは、1億時間に1回の回避可能なエラーが発生するという基準


また、鉄道という性格上ライフサイクルは30~50年と長期間期待されるため、特に部品の供給面について細心の注意を払っています。部品メーカと契約を交わす、あるいは在庫を持つ、あるいは自前で再設計するなど、あらゆる選択肢を持ってリスクを回避しています。

従来はドイツ、フランスを中心とした欧州が市場であり活動拠点でしたが、M&Aにより現在では中国、米国、オーストラリアなどとワールドワイドに事業が展開し開発拠点も広がっています。近い将来、モノづくりに使うシステムは統一し、プロセスも標準化したいと思っています。

このように長期間にわたって極めて高い信頼性を求められる製品のモノづくりを支えていくために、EDAソフトウェアについても回路とレイアウト、SI/EMIシミュレーション、FPGAとが相互に連携されており、回路設計者、基板設計者、シミュレーション技術者がコンカレントに設計を進められることが求められます。

中でもマイクロプロセッサを使うための設計環境が整っていることが重要であり、例えばインテルのATOMプロセッサを使うと1000を越えるコンストレインツ(制約条件)が発生しますが、コンストレインツ・ドリブンで配線設計できることが必須です。Lightning(配線&解析ツール)を使ってそのような高速信号の配線環境を実現しています。
また、System Planner(構想設計ツール)は、さまざまな顧客の要求を比較検討できるのが良いと思います。短時間で、回路ブロック、回路のレベル、ボードのレベル、筺体に組み込んだレベルの対象を、三次元あるいはパラメータなど様々な視点で調整できるのがとても魅力的です。

シーメンス鉄道部門にとって、図研は長期に渡るパートナと考えており、現在まだ使っていないDFM-Center(製造設計ツール)やDragon(自動配線ツール)の導入も含めCR-8000への移行を視野に入れて今後の電気設計環境のさらなる強化を計画しています。

■聴講したお客様からの感想
鉄道車両、信号分野のユーザ様だけでなく、広く産業機器分野からも多く方に聴講していただき、発表内容についても高いご評価をいただけたようです。

ほとんどの聴講者から、シーメンス様の具体的なツールの使用事例が「参考になった」と回答をいただき、中でも安全基準への対応や、鉄道事業の話自体が興味深かったとの回答が半数ありました。
アプリケーションとしては System Planner(構想設計ツール)への関心が高かったようです。

講師のフリューゲル様が熱く語っていた、ワールドワイドに広がった拠点を1つのプロセスで統一したいという強い意志は、高い安全基準を維持していくという強い決意の証であるとも感じました。


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