Club-Z特集:Zuken Innovation World 2014 アカデミックセッション特別レポート②(後半)

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

☑Club-Z特集

10月16日~17日に開催されたZuken Innovation World 2014は過去最多の方にご来場いただき、大盛況でした。皆様、ご来場をいただきありがとうございました。今年は2日間で53セッションが用意され、うち4セッションが大学教授による最先端の技術を紹介する内容でした。Club-Zではこのアカデミックセッションの内容を2回に分けてご紹介したいと思います。

後半の今回は16日の横浜国立大学 于教授のセッションのつづき(後半)と、17日の京都大学 大学院工学研究科 和田教授、静岡大学電子工学研究所 浅井教授のセッションをご紹介します。

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Zuken Innovation World 2014
アカデミックセッション特別レポート②
ICL(Innovation and Creation Learning)
創造的な技術者の育成
─ 横浜国立大学 大学院工学研究院 于教授による講演内容のご紹介 (後半)

2014.11.20

ICLとは?

“ものの本質”というものを掴めば、もっとも効率的な対策をとることができます。しかも、全く別の解決策を見つけることもできます。しかし、この“ものの本質”を掴めない要因のひとつが“ものの考え方”にあります。

この問題の背景を、自動車の開発がどれだけブレイクスルーしているかというのを調べた事例を使って説明します。図1は、自動車の開発で行われているプロセスを単純化してまとめたものです。

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(図1:自動車の開発例の課題)



説明すると、まず市場を調査してニーズに合うコンセプトを決めます。次はベンチマークを実施してそのコンセプトにあう基本設計はどこから開始すればよいかを決めます。その後、設計・評価を行い、最後には摺合せで最適化して設計を完成させます。これが多くの自動車メーカが行っているプロセスです。

これをICL的な見方をすると、いろいろな課題が見えてきます。まず、新しいニーズであるにも関わらずベンチマークから行ってよいのかということです。
ニーズが新しいということは、従来の設計の延長線にあるベンチマークから行っても、捉えきれないということです。結局従来の延長線上の設計しかできないことになります。

今日の自動車メーカはもっと飛躍することを期待しています。しかし、このプロセスで飛躍するのは難しいでしょう。例えば、摺合せはとても重要な技術ですが、なぜ摺合せが必要かと言うと、その問題があるということを最初から知らないからです。最後のギリギリになって、こうでもないああでもないと摺合せする羽目になっているのです。最初からそういう問題があるとわかっていれば、非常にスマートに設計でき、摺合せが不要になります。これはすごく重要なことですが、“ブレイクスルーするためには日本が得意としている「改善」の他に、「創新」というものも必要である”と私どもは提唱しています。


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(図2:重要なのはイノベーション)



我々の分析によると、できるところからスタートする設計では、ニーズに対して現状の対応できそうな技術を見つけ、そこからスタートします。これが今できるやり方です。しかし、いろいろ別の従来技術が組み込まれたとしても、新しいニーズは残されたままになります。要は、従来の技術で作っていると新しいニーズは捉えきれません。今ある技術の近いものからではなく、新しいニーズを満たす、新しい技術を考えていかないといけません。図3に、新しいニーズをとらえるためのフローを示します。



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(図3:新ニーズを捉えるための開発)