Club-Z特集:Zuken Innovation World 2014 アカデミックセッション特別レポート②(前半)

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更新日 2016-01-20 | 作成日 2007-12-03

☑Club-Z特集

Zuken Innovation World 2014アカデミックセッション特別レポート②

実装部品におけるはんだ接合部の信頼性評価
─ 横浜国立大学 大学院工学研究院 于教授による講演内容のご紹介 (前半)

2014.10.30

【応用例2 CSPはんだ接合部の寿命評価-】

CSPになると、はんた接合部の寿命はなかなか維持することができません。実際BGAと比べてどうか、寿命のワイブル分布(図6)をとると、実はBGAは平均寿命が長いだけでなく、ばらつきも少ないことがわかります。これに対してCSPはバンプが小さくなり、寿命が短いと同時にばらつきも大きくなります。

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(図6 CSPとBGAはんだ接合部の疲労試験の結果 )


このような場合、平均寿命を改善するか、ばらつきを少なくするかという問題が生じます。平均値を良くするには設計を変更しなければいけないのですが、ばらつきを少なくするだけならば、現行の設計で行えます。詳細は省略しますが、我々が開発したばらつきを分析する方法で実験を行うと、クラックの発生モードが4階層に分類できることが明らかになりました。
これは、基板側のランド設計のばらつきというのが制御できていないことに起因するとわかりました。ランドが大きすぎても、小さすぎても信頼性が悪い、中くらいだと信頼性が良いという結果になりました。そうなるとランド径を管理すればよいのではないかという仮説を立てることができます。

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(図7 実験結果の詳細分布 )


実際にシミュレーションを行うと同じ結果が得られます。シミュレーションだとランド径だけを変えられます。基板側ランド径を小さくすると同じ負荷でも基板側のクラックが早く進展するという結果になります。これが基板側ランド径を大きくすると、CSP側のクラックが早く進展するという結果になります。上下のランドがそれぞれ同じサイズだと上下のクラックもほぼ同じ寿命になります。

この傾向がわかれば、ランド径のばらつきが小さいグループ、中くらいのグループ、大きいグループに分けてもう一度確認してみます。すると実験結果とシミュレーション結果が見事に一致します。図8の赤③が上の径と下の径がほぼ同じになるケースです。平均値はほとんど変わらず、ばらつきも十分抑えることができています。他のふたつのケース(赤丸①、②)はばらつきが大きく、0.1%の累積故障サイクル数で比較すると、倍以上違っていることがわかります。このように実験結果を裏付けて、問題の所在をより明確にすることがCAEの果たす重要な役目です。

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(図8 確認試験の結果 Mode①、Mode②、Mode③)


パワーモジュールの信頼性評価

最近何かと話題のパワーモジュールですが、その信頼性を評価するにあたり、何が難しいかといえばパワーモジュールは発熱すること、そして熱は均一でなく、分布することにあると言えます。また、熱の分布はどんな材料を選ぶかで結果が全く違います。

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(図9 パワーモジュールの信頼性評価 )


CAEでシミュレーションすると発熱がどうなるか、それによって発生するミスマッチがどうなるのか、寿命になるとどうなるのかなどが調べられます。
一つの例ですが、ワイヤボンディングとリードフレームに関して、実際の応力の分布がどうなるのかを確認できます。解析すると、熱はワイヤボンディングのワイヤの下に集中するので、そこに歪みが集中して、はんだが劣化していくことがわかります。これは最も大事な熱の伝達ルートが閉ざすことになり、はんだの寿命は熱の性能や電気的性能にも影響します。このように、今の開発には非常に複雑で様々な問題があり、本質を見極めて適切な対策をとるのが非常に難しい状況です。したがって、いろいろな見地から問題分析をサポートしてくれないと、なかなか問題の本質を見極めて適切な対策を採ることができません。CAEもこれに対して現状は十分貢献しているとは言えません。なぜかと言えば、それはCAE自体の問題ではなくて、CAEをどう使うかが現場に浸透していないということが大きいと我々は考えています。



ICL(Innovation and Creation Learning)と創造的な技術者の育成

このような開発現場の状況を目の当たりにして、我々が7~8年前から言っていることは、技術者に対するトレーニングが必要だということです。技術者が新しい技術を使いこなす、そして新しいものに対してチャレンジするモチベーション、モノの考え方、建設的な結果を出すトレーニングを行わない限り、技術的な課題を整理することはできません。

我々は、このトレーニングをICL(Innovation and Creation Learning)という形ですすめています。

(つづく)

※ICLの内容につきましては、次号に掲載予定です。

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