コラム
同時にやるシクミづくりとヒトづくり。
やっと気づいた改革の本質
【第48回】強みを知り活用して逆境に備える
株式会社RDPi 代表取締役 石橋 良造
2015.07.23
「強み」の使いすぎに注意
それでは、「強み」を活用し伸ばす方法について解説したいと思います。その方法は、その人の「強み」やその組み合わせによって、そして、置かれている状況、経験、性格、人間関係などによって違うため、自分に合わせて活用方法を工夫する必要があります。ただ、「強み」を活用できているときは、脳科学によれば、安らぎが生まれ、気持ちよく、自然で、自分らしいと感じるということがわかっていますから、基本的には、次のような方法で「強み」を活用し伸ばすことができます。
・振り返ってみて「強み」を活用したと思える時には、
そんな自分をほめると同時に、活用していたときの感情を再認識(再現)する
・「強み」を活かしてうまくいったときの意図・動機を深掘りする
・「強み」を活かしてうまくいかなったときの意図・動機を深掘りする
・「強み」を活かす状況を探求する
・自分の行動が他者にどのように理解されているのか観察する
・「強み」を活かすことを自分に言い聞かせる
「強み」の活用で気をつけないといけないのが「使いすぎ」です。「強み」を使うのは自分にとって自然なことなので、自分が気づかない間に使いすぎてしまう可能性があります。とくに、ストレス状態や怠惰な状態では「強み」を過度に使う傾向があります。そして、問題となるのは「強み」を使いすぎると他人の目には「弱み」に映るということです。
たとえば、柔軟性が「強み」の場合、適度に「強み」を使っているときは様々な状況に適応できており、柔軟性の高さは誰の目にも明らかでしょう。しかし、余裕がない状況になるとつい過剰に柔軟性を使ってしまい、他の人からは、一貫性のない行動で右往左往しているだけと見えてしまうことがあります。同じように、勇敢さが「強み」であっても、使いすぎると他人には自己中心的で傲慢な態度と思われてしまいます。
つまり、「強み」を使う程度には連続性があり、使いすぎたり使わなかったりすることで行動が変化するのです。図に示したように、活用しようとすると使用度合いはどんどん拡大して、使いすぎの状態になってしまいます。そして、使いすぎだからと抑制しようとするとどんどん使わなくなり「強み」を活かせないことになってしまいます。
大切なのは、常に周囲の反応を見て「強み」の使用が適度かどうかを意識することです。使いすぎていると感じたときは、他の「強み」を使うことでバランスをとるとよいでしょう。
しかし、使いすぎていることに自分で気づくのは難しいものです。そのため、「強み」ごとに使いすぎの兆候と考えられる危険信号を決めておくのもひとつの方法です。先ほどの柔軟性の使いすぎであれば、たとえば、周りに感化されていると思える行動に気づいたら危険信号であると考え、意識して柔軟性を使わない行動をとるようにします。勇敢さの使いすぎであれば、自分は正義の味方だとうぬぼれたときが危険信号だというようなことです。
「強み」を伸ばすには、「強み」をうまく使っているときと使いすぎているときの行動と思考を客観的に分析しておくことが大切です。
苦しい状況に置かれているときに必要なのは、その状況から抜け出す行動を起こすことです。そのためには、「何らかの行動を起こさなければこの状況は変わらない」「自分には何か行動を起こすことができるんだ」という思いを持つ必要があります。このスキルは、自分の強みを知って、日頃からその活用を心がけることで高めることができるのです。
ただし、自分の強みを活かすことを意識する一方で、ひとつの強みばかりを使いすぎないように、自分なりの危険信号を意識しておくことも忘れないでほしいと思います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
●執筆者プロフィール 石橋 良造
日本ヒューレット・パッカード (HP) に入社し、R&D 部門で半導体計測システムの開発に従事した後、設計・製造改革プロジェクトに参加。ここで、HP 全社を巻き込んだ PLM システムの開発や、石川賞を受賞した製品開発の仕組み作りを行い、その経験をもとに 80 社以上に対して開発プロセス革新やプロジェクト管理のコンサルティングを実施。
コンサルティングを続ける中で、より良い改革のためには個人の意識改革も合わせて実施する必要があるとの思いが強くなり、独立して株式会社 RDPi を設立した後、北京オリンピックで石井慧を金メダルに導いた(株) チームフローのコーチ養成コース、および、一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会の公式プラクティショナー・コースを修了し、個人のやる気を引き出す技術の開発と、開発プロセスやプロジェクト管理の仕組み改革とを融合した改善活動を続けている。
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