設計者にも知ってほしい。マイクロ波の基礎知識
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「ミリ波」応用 ─ 活用例と測定法
マイクロウェーブファクトリー株式会社
2015.02.19
みなさん、こんにちは。
前回に引き続きマイクロウェーブファクトリーの橋田が「ミリ波」についてご説明します。
前回はミリ波の特徴についてお話しました。今回は、そのミリ波の特徴を活かした応用例として、普及直前ともいわれる大容量高速通信規格「WiGig」と、最近の自動車では標準装備となってきた衝突予防システムの「車間距離レーダ」についてお話しします。
■WiGigとは
WiGig (Wireless Gigabit、ワイギグ) は、60GHz帯の無線通信規格であり、Wi-Fiの規格の中の1つです。正式仕様は2009年12月に定まりました。名前の通り、ギガビット通信(最大4.6Gb/s ~6.75Gb/s) を可能にした超高速通信で、従来のWi-Fiの100倍近くの通信速度を実現しています。今後発売されるPCやタブレット、スマホなどすべてのモバイル機器に搭載される可能性があります。
WiGigは下記Wi-Fi規格表の、第5世代のIEEE 802.11adにあたります。60GHzと周波数が高く、この帯域を使う通信が多くないことから周波数に空きがあり、チャンネル幅を広帯域に確保しやすい状況です。この周波数幅の広さがギガビット通信を可能としています。
表.1 IEEE規格一覧
図1. 2.4GHz帯、5GHz帯,60GHz帯
■WiGigが高速通信に適している理由
では、どうして60GHzは高速通信に適しているのでしょうか?
それは、この帯域のミリ波には下記のような特徴があるからです。
<60GHzミリ波の特徴>
- 周波数帯域幅を広く確保できる
- 免許不要で、出力10mW、帯域幅2.5GHzで送信可能
- 空気による減衰量が大きく、直進性が強いため、他機器との干渉が起こりにくい
- 障害物による減衰が起きやすいため、屋外への影響が少ない
このような特徴をもつため、WiGig はPCやタブレット、スマホなどすべてのモバイル機器に搭載され、ハイビジョンテレビの映像など高画質大容量のデータを、屋内でやりとりするような新たなインフラとして検討されています。速さについて聞くところによると、30分のハイビジョン動画を転送する場合現状の2.4/5GHzのWi-Fiでは、ダウンロードが 1分半ほどかかるところ60GHzのWiGigでは10秒ほどで出来るそうです。 とても速いですね。
いろいろなメリットがあるWiGigですが、設計における課題もあります。
<WiGigの設計における課題>
- ① アンテナの高利得化、周波数特性の広帯域化
- ② アンテナの小型化、低姿勢化
- ③ アクセスポイントの最適化
これらの設計課題の解決のための取り組みとして電磁界シミュレーションを活用する方法があります。
例えば、電磁界シミュレーションを利用してアンテナ性能の設計を効率的に最適化することにより上記①②の課題の解決に向けた検討をすることができます。
また、③のアクセスポイントの最適化についても、部屋の形状、障害物の位置から、通信に適した場所をシミュレーションにより導くことができます。
図2. アンテナ計算モデル
図3. 電界分布図
図4. レイトレーシング法(レイラウンチング法)解析
図5. 屋内の電界分布図
アンテナの設計、環境の解析からアンテナ性能計測、環境計測まで行えます
(※図2~5は電磁界シミュレータEEMを使った応用事例です)