設計者にも知ってほしい。マイクロ波の基礎知識
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「ミリ波」入門
マイクロウェーブファクトリー株式会社
2014.12.18
みなさん、こんにちは。マイクロウェーブファクトリーの橋田と申します。
今回から2回に分けて「ミリ波」について、お話しさせて頂きます。
「ミリ波」は「マイクロ波」という用語に比べて、聞きなれない方も多いかもしれません。「ミリ波」とは俗語で、マイクロ波の中でも高い周波数(30GHz以上)を示す用語です。このミリ波は、その特性上のメリットから、今日多岐にわたって使用されています。
まずは、「ミリ波」の基本的な定義と特徴を説明します。
■ミリ波とは
上の図を見ていただくと分かるように、ミリ波とは1波長の長さがミリオーダ(1~10mm)の周波数のことです。前回までにご説明したマイクロ波よりも直進性が強く、伝送できる情報容量が多いのも特徴です。ミリ波として定義される周波数範囲は広いため、利用者がその周波数範囲がわかるように周波数帯域をアルファベットの「○○バント」で呼ぶことがあります。この「○○バント」の各周波数帯の呼称は右の図をご覧ください。
次に、マイクロ波とミリ波の特徴です。
マイクロ波(特徴)
- ①低い周波数では回折(電波が曲る)する
- ②伝送容量が少ない
- ③空気中の水分による減衰が低い
ミリ波(特徴)
- ①直線性が非常に強い
- ②伝送情報容量が非常に多い
- ③空気中の水分による減衰が大きい
- ④指向性、利得の高いアンテナ設計が容易
- ⑤プリント基板等で、小型化が容易
■どんなところに使われているの?
これらの特徴を生かして、衛星通信、WiGig(大容量高速無線通信)、車載衝突防止レーダ、電波望遠鏡etc.などに用いられています。
例えば、無線通信では、電波の直線性が弱いと多方向に拡散して飛びますので、様々な位置にある通信機器と繋がりやすくなる特徴があります。しかし通信衛星のように宇宙空間の特定位置に滞在している相手と高速に大容量で通信するには、無駄に電波が拡散せず直進性が強い「ミリ波」を使った方が合理的です。
「ミリ波」はレーダにも応用されています。自動車レーダの場合、移動する自動車の位置を特定し安全性を高めるには、位置計測を細かくする必要があります。「ミリ波」であれば波長が短いために細かい位置計測が可能になりやすいというメリットがあります。
また、他の例で、最近頻発している局地的な豪雨(ゲリラ豪雨)の予測に使われているXRAINにも、ミリ波レーダが使われています。天気予測は、空気中の水分や雨による電波の減衰特性を使います。レーダから発射された電波は雨雲で吸収されますので、雨雲で微弱に反射される電波強度から雨雲の位置が特定できます。XRAINは従来のマイクロ波レーダに比べ5倍の頻度、16倍の分解能での観測が可能で、雨量の推定精度も高いため、ゲリラ豪雨の早期発見・監視を担うものとして期待されています。
このように「ミリ波」は身近な所で多岐にわたって利用されるようになってきています。